エルダー2023年1月号
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後は再雇用制度を採用)では近年、60歳以降の高齢社員層の離職が相次ぐようになっていました。総務人事部で退職者への個別面談を行ったところによると、再雇用後の賃金水準の低さが大きな原因となっていることが明らかになりました。さらに調査を進めると、A社の属する地域における近時の建設・工事需要の高まりから、同業他社における高齢社員層を中心とした賃上げの動きがあり、相対的に自社の賃金競争力が低下していました。同社の定年後再雇用の賃金制度の特徴として、60歳以降、責任を軽減するとともに、65歳まで1年ごとに基本給の水準が10%ずつ低下していく(管理職と非管理職で下げ幅に違いがあり、管理職の方が下げ幅が小さい)ことがありました(図表1)。特に非管理職層でみれば、旧制度は再雇用初年度こそ基本給の減額幅が小さいものの、65歳になる年次では定年前の50%まで低下します。化していませんでしたが、近年の建設・工事業における現場技術者の人出不足感が影響し、60歳以降の高齢技術者の需要が急激に高まったことを受け、A社の人事制度では賃金競争力の面で劣る状態に陥ったのです。惧したA社のトップは、早期に高齢社員層の賃金水準の見直しに着手することとしましたが、再雇用制度という位置づけのままでは定着に十分ではなく、60代だけではなく、50代半ば以後の技術者の定着もケアする必要性が高いという判断から、定年延長を行うという制度改定の決断に至りました。年齢は一気に65歳まで引き上げるのではなく、しました。新定年年齢以降は、従来通り再雇用となり、残り2年間は継続雇用制度の枠内で処旧制度を導入した当初はそこまで課題が顕在今後も同様の状況が続くことをたいへんに危A社の取組みの工夫としては、まず新定年定年後再雇用制度から、段階的に65歳まで延長する定年延長制度への見直し常に状況を確認しながら制度の見直しを!制度、生涯現役時代生涯現役時代のの仕組みづくり高齢社員活躍支援ののポイントポイント高齢社員活躍支援28★本連載の第1回から最終回までを、当機構ホームページでまとめてお読みいただけます https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/series.htmlA社の事例中小建設・工事業のA社(60歳定年制、定年株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント 森中 謙介 高齢社員活躍支援に向けた最適な人事制度を構築するには、常に自社の置かれた現状を正しく分析し(本連載第1回で紹介した「現状分析」の手法を参照)、内外の経営環境の変化に適応するための制度見直しをタイミングよく実施することが必要です。 本連載の最終回では、運用実態をふまえて柔軟に制度を見直した2社の事例について紹介します。63歳までとし、段階的に定年延長を行うことと最終回

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