エルダー2023年1月号
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継続雇用の拒否に関する裁判例2継続雇用の労働者について、労働契約を更新しないことが許容された裁判例を紹介し、どの程度の事情がなければならないのかみていきたいと思います。紹介するのは、横浜地裁川崎支部令和3年年間の有期労働契約を17回更新した後、無期転換権を行使して無期労働契約となっていたコールセンターに従事する労働者を、定年を迎えたときに継続雇用することなく、労働契約を終了したことが違法となるか争われたというものです。会社が、継続雇用をしなかった理由は、誠実に職務を果たさなかったことや、みだりに自己の意見をもって業務上の処置をしないことといった就業規則に定められた服務規律に違反し、改善指導にもかかわらず、反省や改善が認められないことでした。会社の対応マニュアルにおいては、「意見を尊重し誠実な対応を心がけるもの」とされており、私見を述べないこと、迷惑電話はていねいに断ること、何度もかかってくる場合には上司に対応を依頼すること、わいせつな内容に発展するおそれのある電話は、モニター依頼を発信し、転送を実施することなどが詳細に定められていましたが、当該労働者は、コールセンター業務を行うなかで、架電者に対して「お客さまも失礼でございますね、私に対して」、「あなたは失礼だ」、「ニュースをご覧になるとわかると思います。ニュースをご覧ください」、わいせつな電話を転送せずに「セクハラですね。警察にいうとあなたは捕まりますよ。こちら逆探知できるんですよ。あなたはもう犯罪者ですね」と返答するなど、不適切な言動をくり返していました。これに対して、会社が業務指導として、架電者から罵■詈■雑■言■が出ても、売り言葉に買い言葉にならないように上司に転送するよう指導したり、感情が高ぶったときの対応を考えるために外部講師からの指導を企画したところその指導を拒否し、その後の業務指導に対しても「これまでの経緯を含め、インターネットにあげる。しかるべき場所で今回のやり取りを公開する」と対応するなど、誠実に指導に応えることなく推移していました。定年が近づく時期においても、会社が業務指導を継続するために通知書を交付しようとすると、責任者の記載や押印がないことを理由に拒絶したうえで、労働組合などの団体および弁護士の同席がないかぎりは指導を受けるつもりはないとの回答に終始しました。最後に指導の面談を行った際にも、改善の指導には従わないと回答しました。裁判所は、この労働者の架電者に対する対応について「中にはそれ1つを取り上げれば■■比較的些細なものとみ得る余地があるとしても、それが度々繰り返されるものであった以上、原告の電話対応の問題や不適切さを示すものにほかならず、全体を総合してみれば被告が策定したルール及び就業規則に反するといわざるを得ない」と判断して、解雇事由に該当することを肯定しました。を指摘され注意・指導を受けながらも、自己の対応が正当であるとの思いから、指導を受け入れて改善する意欲に乏しく、指導を受け入れずに勤務を続けていた」ことや、外部講師による指導に関して「研修内容が適切でないとするのは、原告の専ら個人的な意見であるというべきであり、自己の意見に反するからという理由で研修を受けないということは改善意思の欠如の現れとみることができる」とし、「複数回にわたり被告の指導に応ずるように命じられているのに、同様の理由であるいは些細な点を指摘しては指導を受けることを拒み続けていた」として、指導に応じる意思がないものと判断したことには理由があるとしています。実施及び運用に関する指針」に照らして、「勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由に該当し、継続雇用しないことについて、客観的に合理的な理由があり、社会また、「再三にわたり被告からルール違反等結論においても、「高年齢者雇用確保措置の3311月30日判決です。事案の概要は、入社後1エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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