エルダー2023年1月号
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定年後再雇用拒否が肯定された主な理由通勤時間、出張の移動時間の労働時間該当性出張先に到着するまでの時間は、原則として労働時間にはなりません。また、休日の移動をともなう場合であっても、出張中の移動時間は、原則として労働時間に該当しません。会社からの別段の指示として、物品の監視などが命じられていた場合には、例外的に労働時間に該当する場合があります。Q2通念上相当であるというほかはない」として定年後の再雇用拒否が肯定されました。3紹介した裁判例においては、一つひとつの違反事由は必ずしも大きなものではなく、むしろ些細な出来事といえるようなものも含まれていました。それにもかかわらず、解雇事由に該当し、さらには、客観的かつ合理的な理由および社会通念上の相当性が肯定されたのは、小さな違反であっても、指導を積み重ねていたことにあるといえます。指導しようとしても拒絶されるということがくり返される場合でも、拒絶の理由が正当なものでなければ、改善の意思がないというマイナス評価につながります。労働組合や弁護士の同席を強く求めていましたが、指導自体を拒絶する理由にはならず、指導後に労働組合や代理人となった弁護士との協議や交渉を会社が拒絶したときにはじめて問題となるにとどまります。会社が、改善するはずがないと決めつけてしまって指導もしていなかった場合には、指導を拒絶する態度は明らかにならず、改善の可能性があるかどうかの判断ができないまま、再雇用を拒否することになり、そのような場合は再雇用拒否が有効になるとは考えがたいところです。1判例によれば、労働基準法にいう労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当」と考えられています(最高裁平成12年3月9日判決、三菱重工長崎造船所事件)。る状況であれば労働時間に該当しますが、労務提供の準備に相当する通勤時間は、原則として、労働時間に該当するとは考えられていません。このことは自宅から会社に向かう出勤のときでも、会社から帰宅するための時間のいずれでも同様です。その主な理由は通勤時間中の時間は、業務遂行に従事する必要はなく、その時間を自由に利用することができることから、指揮命令下にあるとはいえない判例がいうところの、「指揮命令下」にあ休日の移動をともなう出張における労働時間の取扱いについて教えてほしい宿泊をともなう遠方への出張(直行直帰)があったのですが、出張先に到着するまでの移動時間は、労働時間になるのでしょうか。また、出張中の移動日に休日が含まれていたのですが、休日出勤手当の支払い義務は発生するのでしょうか。2023.134A

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