エルダー2023年1月号
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コロナ禍で変化した職場の人間関係直接の対話がトラブルの未然防止につながる大野 いまの職場は私語をひかえたり、あるいはプライベートにかかわる話題は避けようとする傾向があります。また、「電話は相手の時間を奪うのでは」と気にし過ぎて、オフィスにいてもチャットなど文字ベースのやりとりをする人も増えています。しかし、文字だけだと細かいニュアンスが伝わらないものです。真意が伝わらないまま一方的に解釈してしまい、相手に不信感や猜■疑■心■を抱き、行き違いによるトラブルが発生することもあります。人はわからないことに対しては想像力を働かせて補完する傾向があり、しかも悪い想像をすることの方が多く、「自分は相手に嫌われているのではないか」とマイナスにとらえ■■ てしまいます。それが積もり積もってしまうと、些細なことでも大きなトラブルに発展することがあります。こうしたトラブルを防止するには、少しでも相手と直接語り合うことが大切です。在宅勤務であれば、画面越しでもよいですし、電話をかけるなど、直接やりとりすることが、コミュニケーションの一番のポイントだと思います。大野 くのは当然ですが、相互交流も重要です。近年は、部下の意見に耳を傾ける「傾聴」が注目を集めていますが、聞き過ぎてもよくありません。「この仕事はやりたくないんだね、だったらやらなくてもいいよ」というように、傾聴を誤解している上司もいるようです。傾聴は、部下の意見に迎合するのが目的ではなく、意見をきちんと受けとめるという姿勢が重要です。もちろん組織なので指示命令系統で動大野 が行われています。でも、「〇〇をしてはいけない」、あるいは「こんな裁判例があります」といわれ、研修を受ければ受けるほど、「加害者になったら怖い」という気持ちが募り、管理職が指示や指導をする際に、あまりものをいわなくなって困っているという相談もあります。しかし、ハラスメントを恐れてコミュニケーションを控えてしまうと、部下との距離が開きすぎてしまい、冗談や軽口をいい合える関係が築けず、逆にハラスメントの土壌を生んでしまいます。そうならないためにも、コミュニケーションのあり方を学ぶ機会を設けることが重要でしょう。何十年も社会人をやっていれば「コミュニケーション力は身についていてあたり前」と思われがちですが、実はそうでもありません。ニケーションの問題で、上司は「いわなくてもわかるだろう」と思い、曖昧な指示をするも、部下が指示の内容を理解できていない、というケースがあります。かつては新卒から定年まで一つの会社でずっと働く終身雇用が一般的で、会社の風土に合わせたコミュニケーショ近年は多くの企業でハラスメント研修例えば、職場における上司と部下のコミュ―大野さんは、企業でのカウンセリングや、働きやすい職場づくりのためのコミュニケーションのあり方などの研修を幅広く手がけています。一般的に、かつてと比べていまの職場は、人間関係が希薄になったといわれていますが、どのように見ていますか。―だれもがいいたいことをいえるような雰囲気も大事になりますね。―コミュニケーション不全がハラスメントを生んでしまうこともあるのでしょうか。2023.12一般社団法人日本メンタルアップ支援機構 代表理事大野萌子さん

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