エルダー2023年1月号
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〜高齢者が快適に働くことができる職場づくり〜産業医科大学名誉教授 神■代■雅■晴■■■■■2022(令和4)年10月5日に開催された「高年齢者活躍企業フォーラム」より、産業医科大学名誉教授・神代雅晴氏による基調講演の模様をお届けします。高齢者が快適に働いていくための職場づくり・健康づくりについてお話しいただきました。高齢者が長く働くことができる職場環境改善をいわゆる団塊世代のすべての方が75歳以上になる「2025年問題」に続いて、その15年後には、15歳から64歳までの現役世代が極端に減少するという「2040年問題」に直面することが予測されています。こうした状況のなかで必要になるのが、「働くことができる高齢者づくり」と「労働生産性の高い高齢者づくり」を2段階の戦略で推進していくことです。これからは、働くことと長くつきあう時代を迎えます。そこで必要になるのは、高齢者が快適かつ安全に仕事ができる環境をつくることです。高齢者が実際に直面する仕事に対し、「無理なく、無駄なく、ムラなく」対応できる仕事と環境づくりが必要になります。職場改善の取組みでは、かつては、作業姿勢や重量物の搬送などが注目されていました。代「令和4年度高年齢者活躍企業フォーラム」基調講演から表的なものとして、腰痛防止を含めた姿勢改善について紹介します。腰痛を引き起こす五悪姿勢(五つの不良作業姿勢)というものがあります。腰が高い、背が丸い、体の傾きが深い、腕を長く伸ばす、急に身体をねじる、といったものです。これを改善するキーポイントが、実は「腕の肘■■」なんです。肘の曲げ角度を90度から100度の範囲にすると、こういう姿勢が消えていきます。アームの法則またはエルボールールと呼ばれています。近ごろはこれらに、転倒、墜落・転落を避けるための改善が加わっています。「令和3年労働災害発生状況」(厚生労働省)から、休業4日以上の死傷者数をみると、転倒と、墜落・転落を合わせた人数が全体の4割近くになっています。死亡者数では、墜落・転落がもっとも多く、全体の25%を占めています。労働災害発生率を男女別・年齢階級別にみると、墜落・転落は女性より男性が多く、男性の60代後半では20代の約4倍となっています。女性は転倒が非常に多く、60代後半は20代の約16倍となっています。高齢社会において、転倒、墜落・転落の防止は非常に大きな課題となっています。すでにいろいろな対策が実施されていますが、受け身の対策にとどまらず、転倒、墜落・転落事故を起こしにくい身体づくりをする、という攻めの対策が必要不可欠だと思います。2023.140産業医科大学名誉教授の神代雅晴氏11人生100年時代のスマイルワークデザイン新春特別企画

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