エルダー2023年1月号
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(聞き手・文/溝上憲文  撮影/中岡泰博)「実るほど頭を垂れる稲穂かな」にならい柔軟な姿勢で周囲とのコミュニケーションをもていねい語を使うことです。年齢や性別で〝君〟や〝さん〟、〝ちゃん〟をつけるのではなく、すべて〝さん〟で呼び方を統一するなど、だれに対してもその人を尊重する姿勢を大事にしてほしいと思います。大野 再雇用された人のなかには、残り数年の勤務を生活のために渋々乗り切ろうとする人もいるかもしれませんが、つちかった経験やスキルを活かし、後輩を育てることにやりがいを感じて前向きな意識を持つ人も多いと思います。それなのに、現場の管理職や同僚が「再雇用で職場に残っているだけだから仕事を頼まない」というような遠慮をすることは、逆に本人の能力を見下していると思われかねません。人は求められるとうれしいし、それが承認欲求の充足にもつながります。遠慮をせずに仕事を頼んだり、意見を聞いたり、相談するなど、引き続き活躍してもらおうという意識が、年下の上司や同僚には必要でしょう。一方、高齢社員に目を向けると、過去の業績やプライドから、年下上司からの指示を素直に聞けなかったり、若手社員の意見に思わず反発してしまう人もいるでしょう。ですが、過去の業績やプライドにこだわっているのは自分だけで、周囲の人たちはそれほど意識をしていないものです。人と人との関係は合わせ鏡のようで、自分が変わることによって周りの態度も明らかに変わります。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざがありますが、高齢社員が余裕を持って自分から柔軟な姿勢を見せれば、相手も話しかけたり、相談しやすくなるものです。また、働き続けていくには職場に精神的な居場所があるかないかが大きいと思います。賃金などの労働条件以上に、心理的に安全に働けることは重要です。働いている時間は寝ている時間を除いて1日の大半を占めるので、職場が苦痛を感じる場になると本当に不幸です。仕事にやりがいを感じたり、職場の仲間とちょっとした会話を楽しめるようになると、職場を自分の居場所のように感じられるようになるはずです。大野 るのはむずかしいと思いますが、社員同士で気楽に話せるコミュニケーションの場を設けてみてはいかがでしょうか。日々の生活や仕事において、スマートフォンをはじめとするIT機器を使うことが必須となっていますが、それが苦手な高齢社員もいます。例えば、若手社員を講師にした社内サークルや勉強会の場を会社が用意すれば、互いにコミュニケーションを深められますし、スキルも向上し、一石二鳥の効果も期待できます。あるいはランチミーティングを奨励し、ランチ代は会社が出すなど、コミュニケーションのきっかけづくりを会社がサポートすることも非常に大切だと思います。コロナ禍では、飲み会や社員旅行をす―再雇用になり役職も降りて賃金も下がり、モチベーションが上がらない人もいます。職場の上司や同僚、あるいは高齢社員自身が心がけるべき点とは何でしょうか。ミュニケーションを活性化するために企業として支援できることは何でしょうか。―若い世代との相互交流など、職場のコ2023.14一般社団法人日本メンタルアップ支援機構 代表理事大野萌子さん

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