エルダー2023年1月号
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健■■男■■と 思■■へるものを 太■刀■はきてかにはの田■井■に 芹■■ぞ摘■みける作品の意味は、「あなたは、太刀を腰にする勇ましい健男と思っていましたのに、かにはの里の水田で、私のために一生懸命になってセリを摘んでくださるなんて、本当に優しいお方なのですね」というものです。59エルダー食文化史研究家●永山久夫350FOOD人間は、四季のめぐりのなかで生活している以上、それぞれ季節の変化に、うまく適応できなければ、健康を維持することはむずかしくなります。昔の日本人は、このような季節感を身につけ、体の養生をしてきました。春、夏、秋、冬、それぞれの季節に野山や田畑が育てた食べ物を摂ることによって、四季の温度差に体をならし、無病息災を願ってきました。春といえば「春の七草」。その筆頭がセリです。春を迎える前に、何はおいても、セリの力をちょうだいしなさいという意味が込められているからにほかなりません。セリは、湿地帯を好む多年草で、氷の残る冷たい水辺でも、しっかりと根を張って、身を縮めながら、春をじっと待つ辛抱強さがあります。古代人にとっても、セリは健康を保つための自生する野の野菜で、『万葉集』にも次の作品が残されています。また、次のような作品もあります。あかねさす 昼■■は田■たびて ぬばたまの夜■■のいとまに 摘■める芹■■これ「昼間は、稲田管理のあれこれの仕事がたくさんあって、忙しいために、夜の手すきの間に摘んだセリです。どうぞ、召し上がってください」という意味で、役人をしている男の優しさを表現しており、当時の男たちは、女性に思いやりが強く、女性にとっては頼りがいがあったようです。セリはビタミンCやビタミンE、カロテンの宝庫で、免疫力を高め、風邪やインフルエンザなどを予防し、体力強化に役に立つといわれています。味噌汁やおひたしなどにして、優しい春の香りを味わいましょう。季節のもので健康管理優しい奈良時代の健■■男■■日本史にみる長寿食セリを味わい春を待つ

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