エルダー2023年1月号
65/68

瀧澤提灯店TEL&FAX:03(3982)1402父である親方の厳しい指導で一通りの技術を習得(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)んいゅう文字、楷書の軟らかい印象の場合は勘か亭て流りの雰囲気を加えるなど、お客さんと話し合って決めます」瀧澤さんがこの道に入ったのは父である先代親方から学んだ。「兄が後を継ぐ予定だったのですが、修業が厳しくて途中で逃げてしまい、私が継ぐことになりました。本当は自動車の修理工になりたかったんですが、親戚が集まるなかで後を継ぐよう迫られ、やむなく承知したのです。その途端、父から﹃今日から親でもなければ子でもない﹄といわれ、厳しい修業生活が始まりました」仕事の説明は最初の一度だけ。仕事のやり方が気に入らないと先代親方は厳しく注意してきたという。「自分の字をつくれ」といわれたのも先代からの指導だ。「自分の字ができれば﹃瀧澤の字﹄とひと目でわかる。そうならなければだめだといわれました」昼間は親方の仕事を手伝い、夜は字を新聞紙に描いて練習し、朝食前に見せてダメ出しされることのくり返し。「提灯に描いてみろ」といわれるまで10年以上かかったそうだ。厳しい修業を経てきたので、仕上がりを見る目は厳しい。「自分が以前に手がけた提灯と同じものをつくってほしいと頼まれることがあります。自分の古い作品を見て﹃こんな仕事をやっていたの?﹄と感じたときは、預かった提灯を破って新しくつくり直してしまうこともあります。﹃これで完成﹄ということは、死ぬまでないのではないでしょうか」自分におごることなく、誠実に仕事と向き合う瀧澤さんに、真の職人魂を見た思いがした。63100年以上続く「江戸提灯」の老舗提灯の骨の上で筆先が横に広がらないように、先が短くコシのある筆を用いる畳んで携帯できる「懐提灯」を復刻(左は江戸期、右は大正期につくられたもの)ちょうどよい墨の濃さを「色とツヤ」で判断する瀧澤さんが持っているのは、祖父の代から使われているすり鉢。このなかに墨を入れ、お湯を入れてかき混ぜ、適度な濃さにして使う祖父の代から伝わる紋帳を参考に、家紋を描くことも多いエルダー vol.32315歳のとき。提灯づくりの技術は、

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る