エルダー2023年2月号
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にも力を注ぐ。同社の技能グランプリへの参加もその一つだ。「自分の店で、ある程度の地位をもっておりますと、ふだんの仕事には一定の枠があるものです。自分の厨房に立つだけでは味わえない経験をすることで、仕事へのモチベーションを高く持ち続けることができますから、技能グランプリへの挑戦は大きな意味がありますね」と加藤総料理長。熟練の技を持った料理人にとっても、技能グランプリを通じて、ふだんの仕事では得られない経験をする意義は大きいという。厚生労働省と中央職業能力開発協会、そして一般社団法人全国技能士会連合会が主催する技能グランプリは、優れた技能を有する技能士※が、年齢にかかわりなく、技を競い合い日本一を目ざす大会。1981年度に第1回が開催され、2002年度からは隔年で開催されている。「特級、一級、単一等級の技能士について一層の技能向上を図るとともに、その地位の向上と技能尊重機運の醸成に役立つこと」が、開催の目的だ。参加資格は、「都道府県職業能力開発協会会長または都道府県技能士会(連合会)会長等から推薦された特級、一級、単一等級の技能士」。競技職種は、「繊維」、「建設」、「一般製造」、「一般」の4部門の計30職種に及ぶ。1993年に開催された第12回大会から、日本料理が競技職種に加わった。競技は1日で行われ(競技時間:3時間20分)、全国から選ばれた料理人が、四つの課題で競い合う。四つの課題は、日本料理でもっとも重要とされているもので、第一課題が「平ひ目めの薄う造づり」、第二課題が「煮に物も椀わ」、第三課題が「酢す肴ざ」。第四課題は「応用料理」で、第一課題から第三課題までに使った残りの食材を使用し、オリジナルの料理に仕上げる。基本的な技能から、料理のアイデア、盛りつけのセンスなどが問われる課題だ。料理の評価は、見た目の美しさだけではなく、食材の取り扱い方や調理技術、衛生面なども対象になるため、料理人の総合力が問われる競技だ。「参加者はいずれも熟練の料理人なので実力は紙一重。その差はほとんどないに等しい」と加藤総料理長。入賞することが、いかに至難の技であるかが想像できる。「競技ではとても緊張しましたし、金賞を受賞したときは本当にびっくりしました」と榎本さんは、控えめな口調で当時をふり返った。榎本さんは現在51歳。子どものころから料理が好きで、「四季折々の表現ができる」ことに惹かれて、日本料理を志した。「親方」と呼ぶ加藤総料理長とは前職場の目黒雅叙園時代から師弟関係にあり、ザニューオークラ入社も、同じ2001年。「親方から、※ 技能士……技能検定の合格者に与えられる国家資格技能グランプリのことを聞き、興味を持った」のがきっかけで挑戦することになった。このときは惜しくも入賞はならなかった。捲け土ど負けていられない」という気持ちで挑んだ第28回大会では、敢闘賞に入賞。そして、3回目の挑戦で見事、最高位の金賞を射止めた。「技能初出場は2013年の第27回大会だったが、かなょう重ち来ら、「全国にはすごい料理人がいる。自分もいんんのらすく技能グランプリの競技職種は年齢にかかわりなく技能を競い合う親方との二人三脚「ここまで真剣に仕事に向き合ったのは初めて」14左から榎本副料理長、加藤総料理長、望月副料理長30種

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