エルダー2023年2月号
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グランプリに参加するようになってからは、毎日の仕事にも大会を意識して取り組むようになりました。親方にもっとも力を入れて指導してもらったのは『盛りつけ』。くり返し指導してもらいましたので、これが金賞の決め手になったのかもしれません」と話す。そんな加藤総料理長と榎本さんの姿を間近で見て、刺激を受けたのが望月さん。望月さん自身も、榎本さんの練習を手伝いながら、「これはすごいことをやっている」と感じ、技能グランプリへの思いを強くしたという。望月さんも、榎本さんと同様、目黒雅叙園を経て、ザニューオークラに移った逸材で、現在人になった」と笑顔で話す。加藤総料理長との練習で特に印象に残ったのが、料理人のセンスが問われる第四課題の練習で、「ここまで親方と話し合い、やり合うことはありませんでした。ものすごく勉強になった」とふり返る。そして、「とことん考え抜き、料理に真剣に向き合ったのは初めて」という望月さんは、初挑戦の第30回大会で銀賞、2回目の挑戦の第31回大会で金賞を獲得した。「金賞を受賞した料理人としての責任をひしひしと感じながら、仕事をしています」と口を揃える2人は、さらなる成長を目ざしている。「技能グランプリを経験したことで、自分たちの修業時代を思い出し、料理への思いを再確認してほしい。そして、自分たちが歩んできた道を継承し、若手につなげていかなければという気持ちを持ってもらいたい」――。これが、金賞受賞者の2人に対する、加藤総料理長の大きな願いだ。実際に榎本さんと望月さんは現在、技能五輪全国大会に出場する若手料理人の育成にあたっている。特筆したいのは、ザニューオークラの若手料理人はもとより、神奈川県内の他店の若手料理人も積極的に指導していること。「技能五輪全国大会に出場する人は、お店の代表であるとともに、神奈川県の代表でもあります。『よそのお店の方だから関係ない』というわけにはいきませんから」と加藤総料理長。オール神奈川で、若手料理人の栄冠獲得に取り組んでいるのだ。こうして、加藤総料理長の元、金賞受賞者から若手へ、技能の好循環が生まれている。榎本さんと望月さんの指導によって、ザニューオークラから技能五輪全国大会の入賞者が生まれる日もそう遠くないだろう。一方、加藤総料理長によれば、料理人の世界も時代とともに変化し、若手育成の手法も以前とはかなり変わってきた。かつては「まずは鍋洗いから」と、長い下積み経験が普通だったが、「昔のような修業を命じれば、半年もたない」のが実情。加藤総料理長は、入社の翌日から新人に包丁を持たせ、腕を磨けるようていねいに指導する。「日々一つでも、昨日よりも今日は進歩したということを実感してほしい」と、若い料理人の育成に心を砕いている。での継続雇用制度を設けており、71歳の加藤総料理長も、社員として現場を指揮している。「手に職を持つ人間は、比較的長く、現役を続けられるのがよいところ。一般のサラリーマンも、つ人間は75歳ぐらいまでは現役でいなくては」と語った。という思いもあるという。しかし包丁を下ろし、現役を退いた後も、業界活動などで「日本料理を盛り上げていく」構えだ。加藤総料理長は「日本料理のよさを永遠に伝えていきたい」と、さらなる先を見すえている。ザニューオークラの定年は65歳だが、75歳ま一方で「75歳になったら後進に道を譲ろうか」金賞受賞者として後進を指導店を越えた若手料理人の育成もまでは現役で目標は「日本料理のよさを永遠に伝える」65歳、70歳と働く時代なのだから、手に職を持47歳。「おいしい日本料理が食べたくて、料理1575歳

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