エルダー2023年2月号
18/68

食文化史研究家●永山久夫2023.216※ 寒ダラ……1月上旬〜2月上旬に獲れるマダラのことFOOD351タラは魚のなかではたいへんな大食漢。大きい口と鋭い歯を持っており、非常に大食いであることから、「たら腹」という言葉の由来になっています。体長は1m、体重は20kgにもなり、体の前部が肥大していて、口、頭ともに大きいのが特徴です。北海道や北陸などではスケソウダラと呼ばれ、その卵巣がタラコになります。また、白子はキクコとも呼ばれ、汁物、煮物、和え物、てんぷらなどに珍重されています。やわらかくて、濃厚なうま味があり、ミネラルの亜鉛が多く含まれ、仕事に対する意欲や活力を高めるといわれる男性ホルモンの原料になります。タラにはビタミンDが多く含まれ、ウイルスなどに対する免疫力強化に役立つことがわかっています。また、人間の筋肉の原料となるアミノ酸も多く、高齢者に起こりやすい足腰などが弱るフレイル(虚弱)を防ぐうえでも効果が期待できます。カルシウムも含まれていますから、現役のまま健康寿命を延ばす食材としては、理想的です。タラは冬の代表的な食材ですが、寒くて寒くて、遠くでごうごうと海鳴り音が聞こえてくるような日、山形県の庄内地方では、寒ダラ※の「どんがら汁」をつくります。寒い日には、どんがら汁に勝るご馳走はありません。魚屋さんから、車でないと運べないほどの大ダラを買ってきて、大鍋を用意し、まな板のうえにタラをのせ、ぶつ切りにします。「どんがら」というのは、タラの頭部や内臓のことですが、ありとあらゆる部分をすべて用いるため、よい出汁が出て美味。白菜、ねぎ、大根、豆腐に酒■■粕■■も入れ、味噌で味をつけると美味いのなんの。幸せホルモンのセロトニンがいっぱい出て、食べているみんなが、まるで七福神のようによい表情になるのでした。ワッハッハー。タラは大食漢の「たら腹」どんがら汁でワッハッハー寒い夜にはどんがら汁日本史にみる長寿食

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る