エルダー2023年2月号
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康や社会適応力などによって評価する物差しがほとんどですから、直に仕事と対面する能力に対しての評価、私はこれを「仕事対処能力」と呼んでいます。この労働適応能力と仕事対処能力の二つを評価する物差しをつくり、評価した結果、仕事とその人との間にミスマッチが起きていたら、ミスマッチの度合いを少なくしていく。そうすることが、第1段階の健康資源の確保や第2段階の生産効率の確保にもつながっていきます。第4段階では、労働適応能力に仕事対処能力を加えた評価として、標準的な「職務能力評価」を行う物差しをつくり、広く雇用の場で使われるように図っていく。これらはやはり、国が音頭を取って行うべき戦術です。以上が、働くことができ、かつ労働生産性が高い高齢者づくりを行っていくうえでの構想となります。ここからは、第1〜3段階の戦術について、もう少し詳しく説明していきたいと思います。第1段階の戦術は、「エイジマネジメントに基づく健康資源の確保」です。エイジマネジメントとは、「年齢を管理する」ということです。労働寿命の延伸を図るための策としては、活力ある高齢者として生き続けるための健康管理と、その健康資源を基盤としてより高い生産能力を持っている高齢労働者へと成長させるための仕組みと対策を、各年代に応じて創出する取組みを行うことが大事になります。例えば、20〜30代は、運動習慣や食生活の形成、ワーク・ライフ・バランスの確立といったことが、エイジマネジメントの役割になると思います。若い世代のエイジマネジメントをしっかりと行うことが、後の労働寿命の延伸にかかわってきます。業およびその作業環境の改善活動をきちんと行うことです。そして50代になると、平衡機能に不安が生じてきて、転倒や転落・墜落のリスクが出てきますので、このリスクを低減させていく。60代では労働適応能力を保持・増進させること、70代では元気に働くことができ、生産性が高い働き手として存在するということを自らが心がけ、過去から積み上げてきたことを保持していく。こうしたことがエイジマネジメントの役割となります。次に、第2段階では、職場において、「職場改善による負担の軽減と生産効率の確保」を図ります。改善活動は、できれば改善対象となる職場の人を巻き込んで、チームを編成して行います。そして、現場でありのままを観察し、課題を探し出します。課題となるのは、いわゆる「三ム」(無理、無駄、ムラ)です。これらを見つけたら、排除するための改善案を出し、チームで実施します。改善できたら、元の状態に戻らないように注意しつつ、現状の問題点を確認します。このような改善をくり返し行い、働きやすい職場、無理なく生産性を上げられる環境をつくっていきます。善についてお話ししたいと思います。齢・障害・求職者雇用支援機構が旧・財団法人高年齢者雇用開発協会だったときに中心となり、1986(昭和61)年度から2013年度までの27年間、産・学・官で高年齢者労働対策の共同研究を行いました。行うにあたり、職務の再設計が盛んに行われていました。具体的には、職場改善に力を注ぐ企業が多く、姿勢改善、重量物取扱いによる腰痛防止、目(視力)の環境の改善に向けられていました。ここからは、第2段階の企業における職場改本シンポジウムを主催する独立行政法人高当時、高齢者の継続雇用のための条件整備を若いときからのエイジマネジメントが労働寿命に影響するエイジマネジメントによって転倒事故を起こしにくい体をつくる40代のエイジマネジメントは、負荷の高い作19エルダー特集2生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈福岡会場〉

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