エルダー2023年2月号
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本日は、産業医の立場から「生涯現役に向けて職場に対してどんなことができるのか」について、お話ししたいと思います。まず、高齢者のみなさんの就業意欲に注目すると、令和元年度『高齢者の経済生活に関する調査』(内閣府)結果では、現在働いている人で「65歳以降も働きたい」という人が87%で約9割となっています。一方で、65歳以降も働く際の基準について、2019(令和元)年の企業調査※1の結果をみると、「健康上支障がないこと」、「働く意思・意欲があること」という回答数が多くなっています。産業保健、あるいは健康管理を行う立場から、高齢者と企業をどのようにマッチングさ高齢労働者に対応する健康課題としては、疾次に、職場の安全や働きやすさについて考え加齢とともに高まる健康診断の有所見率講演①生涯現役に向けて産業保健から見たエイジマネジメントの課題 赤あ津つ順じ一いゅん かち一般財団法人日本予防医学協会せていくかが重要になっています。では、高齢者が働くにあたり、どのような健康課題が考えられるのでしょうか。東京都産業保健健康診断機関連絡協議会でまとめた2019年の「職域における定期健康診断の有所見率」をみると、健康診断の有所見率は、年齢とともに高くなり、65歳以上の男性の8割近くが有所見となっています。有所見は、必ずしも病気というわけではありませんが、何らかの健康上の課題を抱えながら働く確率が、この年代になると増えるということはいえると思います。健康上の課題としては、いわゆるメタボリック症候群や虚血性心疾患についても、年齢とともに増加していきます。がんの発生率も高くなっていきます。したがって、産業保健では従来あまり触れてきていない健康課題についても、サポートが必要になってくるといえます。理事病や健康課題を抱える人が加齢とともに増加してしまうということです。一方、予防可能な課題も多くあるので、それを予測して若い段階からの食事や運動習慣などの生活習慣改善の取組みにも目を向けていく必要があると思います。ていきたいと思います。年齢別死傷災害発生件数の推移から、1999(平成11)年、2016年、2021(令和3)年を並べてみると、全体に占める50歳以上の比率が42%、48%、以上の労働者が増えているという要素もあると思いますが、やはり、これらの年代の労働災害50%とどんどん高まっています(図表)。50歳2023.222※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「令和元年高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」50歳以上に多い転倒・墜落・転落災害70歳以上では休業見込期間が長期化傾向65歳男性の約8割が有所見

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