エルダー2023年2月号
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対策を、職場でしっかり考えていかなくてはいけません。労働災害発生状況※2から、50歳未満と50歳以上を比べると、50歳以上では、「転倒」、「墜落・転落」の比率が高くなっています。また、ほかの調査結果から、高齢になるほど労働災害による休業見込期間が長期化していることが把握されています。70歳以上では、1カ月以上、あるいは3カ月以上となる割合も増えています。高齢者の場合、視力の低下や骨密度の低下など、加齢にともなう機能的変化が労働災害や休業期間の長期化の要因となります。その対応策としては、高齢者自身が機能変化に対して理解を深めること、そして職場がその理解をサポートすることがあげられます。これは、生産性の確保と安全の確保、両方の観点からしっかりとらえて対応していく必要があると思います。産業医としてよく相談を受けるのが、定年や役職定年後の働き方の変化と、その方の体調や気持ちの変化についてです。多くの事業所では、役職定年により、管理職から一般職への役割の変化がもたらされます。あるいは、協力会社への出向・転籍といった形で働き方が変わるケースもあるでしょう。また、新しい職場の斡■旋■、業務委託として働くなど、働き方が大きく変わる場合もあります。これらの結果として、「役職定年で気持ちが萎えてしまった」とか、新しい職場に移ったときに世代間のギャップなどにより「慣れない環境のなかで話し相手や相談相手がいない」という悩みを聞くこともあります。こうした課題への対応も必要です。産業保健で考えるべき高齢化対応のカギは、「健康度や機能変化は人によってばらつきがあるので、ていねいに対応していくこと」です。健康管理、生活習慣病の課題に関しては、若いころからの生活指導などの取組みが必要です。作業関連の対策としては、加齢による機能変化を補完し、力を発揮できるような職場づくり、あるいは職場・作業改善の視点から対応していくことが求められます。厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」では、職場のリスクと人のリスク、両方を視野に入れた取組みが必要とされています。ている措置※3をみると、「仕事量の調整」がもっとも多く、次いで「適職への配置」などとなっています。一方で、「作業方法の改善、作業施設・作業設備の整備」、「職務の再設計、職務の開発」といったところはあまり取り組まれていません。これは今後の課題ではないかと思います。業医の特徴です。労働者の体力・機能の変化に対しての支援の提案ができると思いますし、企業に対しても、加齢による変化への理解をうながし、リスクの低減など職場改善を含む対応支援ができると思います。また、ある職場において有効な施策を横展開していく提案など、高齢労働者に対しての支援は、さまざまな手を打つことができるのではないかと考えています。働く人を見て、働く職場を知っているのが産0■■働き方・体調の変化とともに気持ちの変化への対応も重要2021年2016年1999年エルダー40,00080,00030,507120,000160,000(件)60歳以上の労働者の雇用のために企業が取っ2,61120,71220,93814,52618,16626,4034,24727,56519歳以下※2 厚生労働省 2016年「労働災害発生状況」※3 厚生労働省 2004年「高年齢者就業実態調査」・2008年「高年齢者雇用実態調査」2,607出典:厚生労働省 「労働災害発生状況」を基に作成36,57627,60328,30522,53927,63338,01720代30代40代38,57421,05450代60歳以上23特集2生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈福岡会場〉図表 年齢別死傷災害の発生件数の推移

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