エルダー2023年2月号
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本日は、生涯現役を目ざして、20代からの準備をテーマにしたエイジマネジメントについてお話ししたいと思います。私は公益社団法人日本産業衛生学会のエイジマネジメント研究会に所属しています。最初に、エイジマネジメント研究会報告事項から、二つのお話をさせてください。一つめは、2016(平成28)年の「健康診断の有所見割合が最も増える年代は?」という報告事項です。年齢に応じた健康管理を行っていくにあたり、どの年代あたりから有所見が増えるのかについて、約2万5000人の14年間の健診データを用いて、血圧、GOT※、総コレステロール、中性脂肪、空腹時血糖の検査項目から、一つでも所見がついた人をマークして分析を行い、いろいろなことがわかりました。年齢階級別に基準値異常があった割合を14年間追跡してみると、有所見割合は40〜50代になって急激に増えるのではなく、実際には、20代で最初に38%に所見があり、その後の14年間でプラス16%となっています。30代では最初に生活習慣病予防のため、40歳からの特定健診・特定保健指導が実施されていますが、20代は社会人になって生活環境が変わるなかで、40歳までのおおよそ20年間を過ごしていくことになります。この20年間は、すごく大切な期間ではないかということを、本日は、主に男性のデータからみていきます。実は、産業保健の分野では、製造業系のデータがメインで、かつ、いわゆる終身雇用のなか本題に戻ります。「経年変化の効果量」につ有所見割合がもっとも増えるのは講演②エイジマネジメント生涯現役を目指して20歳代からの準備 樋ひ口ぐ善よ之ゆ ちしき福岡教育大学准教授で、男性のデータは揃っているのですが、女性の場合、追跡データがほとんどありません。女性については、ホルモンバランスの関係で急激に健康状態が悪化するということもよく聞かれますが、実態調査については手つかずの状態です。エイジマネジメントにおいては、女性のデータや、障害者の方の雇用の状態と健康状態などをみていくことも、今後の課題と感じています。いてみてみました。簡単にいうと「どれぐらい年齢の影響を受けているか」をみるものです。暦年齢と有所見の増加の関係性をみていくと、男性では20〜24歳、25〜29歳がもっとも関連していました。このデータは女性もあり、女性の場合は、40〜45歳、55〜59歳のところにピークがあります。男女、年齢ごとにそれぞれの健康課題がありますので、ライフステージに応じた51%に所見があり、14年間で17%増えています。2023.224※ GOT…… グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(肝臓の状態を把握する際に検査する血液中の物質)20代、30代(男性)

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