エルダー2023年2月号
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性を改善する管理業務とは、まったく別物ととらえている人も少なくありません。エイジマネジメントを共通の目標とした機能の統合について、一定規模以上の企業に導入することは、ハードルが高いといわざるを得ないことがしばしばあります。会社組織全体で直面する問題としては、事業環境の激変と見通しが悪いなかで、高齢労働者の知識とスキルをマッチさせて、収益を生み出すハードルの高さを感じることがあります。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大によりテレワークなどの働き方が進展しました。あるいは、デジタル化、DX、エネルギーコストの増大、顧客の購買行動の変化といった状況があるなかで、高齢労働者を活用しようとする動機と自律的な工夫の乏しさを感じざるを得ない場面が非常に多くあります。さらに、エイジマネジメントを阻む日本社会の現状として、年功序列があります。役職定年後に部下だった人たちの配下に入ることは、心理的な抵抗が大きく、適切な場所を見つけづらい、周りも用意しづらいといったことが起きてきます。また、最近のダイバーシティ、インクルージョンの取組み、あるいは、男女平等で好きに意見をいい合える職場はいまだに多くないなか、チームで結果を出すことのむずかしさを感じることがあります。また、本音と建て前、礼儀作法が邪魔をして、フランクなコミュニケーションが取りづらいという実態もあります。それによって安全管理、健康管理、熱中症予防もそうですが、取組みがむずかしいと感じることもあります。労働安全衛生管理の展開を妨げることとして、法令指針通達などの求める内容を現場で実践できる知識や経験を持った人材の不足や、生涯現役を実現できた職場と、そういった考えも及ばない職場の格差が大きくなっていることも実感しています。また、モデルとして紹介される超有名企業で豊富な資金や専門家を抱える事例と、中小・零細企業との格差、さらに平均的な労働者といわれる人たちは産業医と会うことがない人たちが多いといった現実もあります。なかには、病気になったら退職するしかないという立場の方も少なくないですし、その差が非常に大きくなっていると感じることが多くなっています。エイジマネジメントや生涯現役は、非常に重要であることは間違いないと思いますが、働く人たちの私的な部分でも違いが拡大しています。60歳になったときにお一人なのか、養う人がいるのかなど、統計からはわかりにくい部分もあります。エイジマネジメントでは、若いうちから適切な生活習慣を身につけることが大事になりますが、育てられた環境の違いやヘルスリテラシーの問題、産業医が身近にいるかといった社会的資源の違いも壁になります。エイジマネジメントを日本全体で展開するためには、さまざまな面から考えていかなくてはいけません。か。一つは、経営トップにしっかりと問題意識を持ってもらうことが重要ではないかと思います。そして、縦割り部分が解消されるように部門を横断しての会議などを行い、情報交換から始めていくことが有効であると思います。そうした課題にどのように取り組んでいくの格差が拡大するなかでの取組みのポイントは何か会社組織資料提供:株式会社健康企業経営者組織阻むもの人事労働者29エルダー図表  エイジマネジメントを阻むものを考えるうえでの視点と立場特集2生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈福岡会場〉日本社会不足格差

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