エルダー2023年2月号
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くいかなくなります。労働安全衛生法は、基本的に工場内での職業病対策などからスタートしていますから、テレワークにおける問題についてはスタートしたばかりで、法律だけでは対応できないところもあります。できるだけ部門の壁を取り払って、みんなで知恵を出し合い、トライアルアンドエラーでやっていく。そういう気持ちで取り組む必要があるだろうと感じています。神代 トヨタ自動車九州における「地域のパートナー制度」について、もう少し詳しくお聞きしたいのですが、制度をつくり上げるまで、また、運用していく際に苦労されたこと、工夫されたことはありますか。杉山 苦労した点は主に二つあります。一つは「社員にほかの会社で働くことに関心を持ってもらう」ということです。この制度は主に55歳以上の社員を対象としており、いまは幹部社員を中心に考えています。トヨタ自動車か、トヨタ自動車九州以外で働いたことのない人たちです。弊社では継続雇用で働けるのが65歳までですから、65歳を過ぎてからのことを考えるという意味でも、選択肢を広げるために研修を行い、ほかの会社で働くということへ動機づけを行っています。二つめは、「地域のパートナー制度」でほかの会社の支援に行くにあたり、「先方の期待に添う働きができるのか」という不安を、みんなが感じていたことです。この不安を解消するために、本制度の事務局のスタッフが行っているのは、支援先企業、支援をしてみたいという社員、そして事務局とで、支援を始める前にかなり密なコミュニケーションを図っています。人によっては3回、4回と支援先企業へ行き、先方の社長にも会い、先方の状況や課題について詳しくヒアリングをしています。そういった部分に時間をかけて取り組んできました。神代 ありがとうございます。「地域のパートナー制度」の取組みには、制度をつくったトヨタ自動車九州、制度を利用する支援先企業、そして支援に行かれる社員の方、この三者がかかわっています。それぞれにとっての取組みの効果について、お聞かせいただけますか。まず、支援に行く社外兼業社員について杉山 お話しします。現在7人がこの制度を利用して社外で仕事をしていますが、全員が前向きになったと感じています。「自分が支援先の役に立っている」という実感があるからだと思います。週4日は従来通り社内で仕事を行っていますが、効果はそこにも表れていて、いままで以上に積極的に仕事をしているように見受けられます。そうなると、一緒に働く周りの人も含めた人間関係がよくなるのです。以前は、ちょっと斜に構えていたり、若い人が相談に行かなかったりしたのですが、本人が変わってくると、自然とみんなが寄っていくようになり、職場全体の雰囲気がよくなったということがあります。めたものですが、職場の先輩社員が社外で活躍しているのを見た社員のなかからは、「同制度に参加したい」と希望する者も出てきました。実際に、40歳の社員が1人、この制度で副業をしています。も更新されたことを考えると、成果が上がってこの制度は、55歳以上の社員を対象にして始支援先からは、6カ月ごとの契約が、いずれトヨタ自動車九州における「地域のパートナー制度」について2023.232一般財団法人日本予防医学協会理事の赤津順一氏

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