エルダー2023年2月号
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まな要素があげられますが、整理すると、主に以下の三つが考えられます。①制度・処遇の変化多くの高齢社員は、役職定年や再雇用という状況を迎え、その変更にともなって役職が外れる「ポストオフ」を経験し、給与が下がっていきます。いままでは管理職としてバリバリと働いていた第一線の立場から外れることで、「今後は会社においてどのような存在であればよいのか…」といった戸惑い、孤独、自信喪失、場合によっては屈辱感を抱くケースもあります。実際にポストオフを経験したシニア層に話を聞くと、「仕事の責任ややりがいが失われること」の方が給与の低下以上にモチベーションに影響するという声がよく聞かれます。こうした高齢社員層の心情に対して、経営サイドは「ルールだから仕方がない」と割り切っていることが多く、十分に寄り添えているとはいえません。②立場の逆転幼少のころから「指示を出すのは年長者」という環境下で育ってきた高齢世代にとっては、年下上司の指示に従うことが心理的に受け入れがたく、ときに反発してしまう高齢社員も見受けられます。このようなことから、周囲、特に年下上司とのコミュニケーション不足が生じやすく、結果として好ましい関係が構築できない状況に陥ることもあります。「高齢社員とその上司」だけの問題に留まっていればまだしも、元々組織内で強い影響力を発揮していた高齢社員が不活性化し、いわゆる「老害」的にふるまってしまうと、組織全体に悪影響が及び、若手・中堅からポスト高齢層に至るまで、当該高齢社員(年上部下)に対して、また管理職者(年下上司)に対しても大きく不満を抱くことになりかねません。③環境変化への適応力「人は習慣に支配される」という言葉があります。高齢社員のようなベテランになると、年齢を重ねるにつれて過去の習慣から脱却することがむずかしくなり、刻々と変わるビジネス環境への対応が困難になってきます。法への取組み、また働き方改革を念頭に置いた社内諸制度への対応など、新たな仕組みや柔軟な対応に大きな課題が見られます。化への柔軟性が期待されている」という自覚が見られますが、思うような行動変容が図れないのが実情のようです(図表3)。4こ年下上司のアプローチは、まず第一に直属上司による高齢社員への指導アプローチです。特に、専門的知識の吸収やより効果的な新手この点については、一部の高齢社員からも「変のような問題に対して解決のカギを握るの高齢社員の直属上司は、年下の元部下がなる図表3 今後、ご自身が働く上で「周囲から求められる」ことは何だと思いますか年齢問わず、周囲との良好な関係性判断力自身のノウハウ(成功実績/豊富な経験)共有コミュニケーション力サポート力変化に対する柔軟性専門性/得意分野自身のノウハウ(成功実績/豊富な経験)に固執しない姿勢知識/情報のアップデートリーダーシップチャレンジ精神社外人脈役割へのこだわり成長欲求/学習意欲上層部へのパイプ好奇心周囲への自己開示この中には無い0.0%10.0%20.0%30.0%40.0%50.0%5.127.025.819.315.612.311.711.311.17.69.943.337.836.336.136.034.633.12023.244出典:サイボウズ チームワーク総研『「シニア社員の職場との関わり」についての意識調査』(2021年)

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