エルダー2023年2月号
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    20日判決)。事案の概要は、コロナ禍において、自宅待機命令に反して外出し、また、会社が配布していた除菌水を、会社が配布していた以上の数量(合計80リットル)を持ち帰る行為を複数回行ったことから、懲戒処分相当と判断して譴責処分を科したうえで、継続雇用の合意を解除して労働契約を終了させたことが違法となるか争われたというものです。当該裁判例は、「解雇事由または退職事由に該当するような就業規則違反があった場合に限定して、本件合意を解除し、再雇用の可否や雇用条件を再検討するという趣旨であると解釈すべき」と判断しました。会社が、継続雇用合意を解除した原因は、①自宅待機命令という業務命令に違反したこと、②除菌水80リットルを会社の許可なく持ち帰るといった行為があり、③会社の備品を無断で私的に利用していたこと、④人事評価において当該会社が定める普通水準に達していなかったことなど多岐にわたります。これらのうち、③会社設備の私的利用については、解除の判断をしたときよりも後に生じた事情であったことから、解除の根拠にすることはできないと判断されています。当然のことのようにも思われますが、実務で相談を受けていると、解除後に解除の効力による影響が生じるまでに生じた事情を考慮して有効となるよう期待するというのはよくあります。今回のケースでも、解除の判断から定年による契約終了までは3カ月程度の期間があり、その間に発覚した事情を解除の原因として考慮したというものでした。しかしながら、法的な効力の判断としては、解除や解雇の原因は、法的効力が発生するタイミングまでの事情を考慮するのではなく、解除や解雇の通知をしたときに存在していなければなりません。そのため、解除や解雇通知を行うときには、それ以降に原因となり得る事情が生じたとしても考慮することはできませんので、判断するときには解除の原因と判断した根拠資料などを整理しておく必要があります。④人事評価を理由として定年後に継続雇用をしたくないというのも、法律相談でもよくあります。しかしながら、このような事情についても、普通解雇が認められる程度の勤怠不良や著しい能力不足がなければならないということになります。本件では、「せいぜい標準をやや下回っているという程度」と判断されており、解雇事由や退職事由に相当するほど著しく不良であるとはいえないとされました。なお、①および②について、懲戒処分の程度としても譴■責■処分にとどまっており本人が事実を認めて反省の弁を述べ、始末書を提出していることや、その後に同様の行為がなかったことからも、解雇事由に相当する事由があったとはいえないと判断されています。■■3会高年齢者雇用安定法の改正前に労使協定を締結していれば、継続雇用の対象となる労働者の基準を定めて、当該基準に即して判断することが可能とされています。しかしながら、これらは老齢厚生年金の受給開始年齢までの収入を確保することにあり、当該受給開始年齢までの継続雇用は求められる内容となっており、受給開始年齢に至らない労働者は対象となりません。た労働者が、基準年齢に達していないにもかかわらず、会社の就業規則および労使協定に照らして、継続雇用の対象となる労働者を限定できる(普通水準に達していなければならない)という主張をしていました。法律による公的な基準は、私的な合意には効力を及ぼさないといった趣旨で主張されていたものですが、裁判所は、このような主張を否定し、基準年齢に達していない労働者には、労使協定の効力は及ばないと判断しました。てしまうと、高年齢者雇用安定法の趣旨を没却するというのがその理由ですが、高年齢者雇用安定法が強い意味を持つことがあるという点は、留意しておくべきでしょう。社は、2012(平成24)年に行われた今回紹介した裁判例では、対象となってい就業規則等による私的な合意の効力を認め継続雇用に関する労使協定の効力47エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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