エルダー2023年2月号
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業務委託契約を締結しているフリーランサーが労働組合に加入し、団体交渉を申し入れてきました。契約の内容が業務委託契約である以上、団体交渉を拒否しても問題ないでしょうか。Q2労働組合と団体交渉1労働契約を締結している労働者には、団結権(憲法第28条)が認められており、労働組合に加入したときには、労働条件などについて、団体交渉を申し入れることができます。通常、労働者は使用者と比較して立場が弱く、一対一で労働条件などを交渉することは困難であることから、労働者が団結することによって、対等または対等に近い立場となることで、使用者に誠実な交渉を遂行することをうながすためにこのような権利が認められています。労働組合法は、労働組合による行動について、法的な保護を与えており、その一つが団体交渉の申入れであり、これを拒絶すると、不当労働行為という違法行為と評価されることになります(同法第7条2号)。団体交渉を拒絶された労働組合は、労働委員会へ救済申し立てを行うことができます。労働委員会においては、労使双方の主張をふまえたうえで、不当労働行為に該当する場合には、それを是正するための命令を行うことになっています。とはいえ、この労働組合による保護を受けるためには、労働組合法が定める「労働者」でなければならず、その典型的な例は、労働契約を締結している労働者ということになります。2労働委員会は、これまでに、業務委託契約など労働契約以外の契約を締結しているような場合でも、労働者性を認めて、団体交渉に応じるように命じたことがあります。トナーたちが労働組合(ユニオン)を結成し、団体交渉の申し入れを行った事例で、配達パートナーの労働者性が認められています(東京都労働委員会令和4年10月4日命令)。達を希望する顧客と配達パートナーを結びつけ、例えば、店舗の近くにいる配達パートナーが受託して、顧客の元へ配達することで、報酬を得ることができるという関係にあります。この関係は労働契約ではなく、各種のアプリの利用などを根拠づける合意によって法的な関係を成立させていました。ここでは、「デジタルプラットフォーム」において、運営事業者が提供するアプリを通じて、役務(労務)の提供を行う就労者の労働者性が争われています。が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること』を目的の一つとしている(第1条)。この労組法の趣旨および性格からすれば、同法が適用される『賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者』(第3条)に当たるか否かについては、契約の名称等の形式のみにとらわれることなく、その直近の事例では、ウーバーイーツの配達パーウーバーイーツでは、アプリを用いて、配東京都労働委員会は、「労組法は、『労働者業務委託契約者が労働者に該当する場合があるのか知りたい業務委託契約と労働者性労働組合法に定める労働者に該当する場合には、団体交渉に応じる必要があります。業務委託契約という形式だけではなく、労働者として保護に値するかという観点から判断されることに留意が必要です。2023.248A

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