エルダー2023年2月号
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実態に即して客観的に判断する必要がある」として、デジタルプラットフォームにおける労働者性の判断について、「シェアリングエコノミー上のプラットフォームを提供する事業であっても、その実態において、利用者がシェア事業者に対して労務を供給していると評価できる場合もあり得る」としています。労働者性の判断において考慮される事情として、①事業組織への組み入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、④業務の依頼に応ずべき関係、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、⑥顕著な事業者性の有無などがあげられます。まず、①事業組織への組み入れについて、飲食物を受領した後のキャンセルや飲食店と顧客により評価されるシステムは最低評価平均という基準を通じてアカウント停止措置が示唆されていることで、一定以上の水準を確保しようとしていること、ロゴの入った配達用バッグを使用することが多数であることから第三者に対し組織の一部として扱っているといえることなどから、労働力として組み入れられているとされています。次に、②契約内容の一方的・定型的決定について、定型の契約書を用いて配送料などを含めて個別の交渉がなされず、プラットフォームの仕組みや運用は運営会社(以下、「ウーバー」)側が一方的に決定し、契約内容が一方的・定型的に決定されており、③報酬の労務対価性について、ウーバーが配送料を配達パートナーへ支払っており、キャンペーン中の配送料0円のときは注文者に代わってウーバーが配達パートナーへの配送料を負担しており、実態としてはウーバーが配達パートナーへ配送料を支払っているとみるのが相当であるとされました。さらに、④業務の依頼に応ずべき関係については、配達リクエストに3回連続して応諾しないと自動的にオフラインになる設定があり、配達先を事前に示しておらず、応諾して配達先を知らされた後に拒否しづらい状況にあること、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供等については、配達パートナーガイドを遵守して、一定の場合には待機することや所定の対応をするよう求められていること、トラブル発生時にはサポートセンターに連絡することが求められ一定の指示を受けることがあること、ガイドや評価次第ではアカウント停止措置があることなどから、広い意味での指揮監督はあったものといえるとされています。最後に、⑥顕著な事業者性について、配達パートナーは、配送事業における損益についてリスクを負担しているとはいえないこと、他人を雇用して事業を拡大することは禁止されていることなどから顕著な事業者性があるとはいえないと判断されました。ウーバーイーツの配達パートナーは、労働組合法における「労働者」と認めるべきであると判断しています。3労「労働者」に該当するという判断であり、団体交渉に応じるなど、労働組合としての権利を認めるという内容にとどまります。このことは、労働基準法に定める「労働者」と完全に一致するわけではなく、労働時間管理をして時間外労働の割増賃金を支払う義務が生じるとか、そのほかの労働関係法令に従い安全配慮する義務が当然に生じるというものではありません。律の趣旨や目的に応じてその範囲が異なるという現象がここでは生じており、いかなる手続きでどの法律に基づいて判断されたかによって、その法的な影響は異なるという点には留意する必要があります。労働委員会は、これらの事情を総合して、働委員会の判断は、労働組合法に定める「労働者」という同じ用語であっても、法労働基準法の労働者性との相違について49エルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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