エルダー2023年2月号
65/68

(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)にしますが、機械だけでは真円にならないので、ガスバーナーであぶって調整します」そして、現在は渡部さんにしかできないのがコイル製作だ。61ページの写真のように、軸を回転させる装置を使い、銅線を木の枠に約10mm の幅で四角く何重にも巻いていくのだが、たるみが出ると後で修正できないため、事前に張り具合を調整する。さらに巻き上がったコイルは、管の曲面にあわせて曲げる必要があり、渡部さんが手作業で行っている。いずれも経験と勘が求められる作業だ。渡部さんは子どものころからものづくりが好きで、目覚まし時計を分解して組み立て直したり、古いバイクのエンジンでゴーカートをつくって遊んだりしていたという。こうしてつちかわれたものづくりの力は、仕事にも遺憾なく発揮されている。工場では、溶接をしやすくする装置、タップ(穴の内側にねじを切るための治具)を自動化した装置、高さを変えられる作業台など、渡部さん自作の装置や治具がたくさん使われていた。「新しい製品づくりを頼まれると、いかに作業を効率よくできるかをまず考えます」と、笑顔で話す渡部さん。そうした一つひとつの工夫が、精緻なものづくりを支えてきたのは間違いない。「これからも健康に留意して、いつまでも働いてもらいたいです。体力が衰えて自分でつくれなくなっても、現場にいるだけで後輩たちが安心して働けるような存在になってほしいです」と、期待する沼社長に、渡部さんは、「元気なかぎり、働かせてもらえればうれしい」と笑顔で応えた。め製作過程で雌ルを改造して電動タップ(雌ネジを切る工具)を自作株式会社仙崎鐵工所TEL:044(333)4434安全性と作業効率を高める自作の装置・治具の数々 vol.32463製缶業一筋の仙崎鐵工所は今年創業90年を迎えるコイルを傷めないよう、絶妙な力加減で曲げるコイルを巻く装置に計数機をつけ、設定した回転数で自動的に止まるように改良渡部さんが溶接したパイプの例。ビードの美しさに定評があるパイプの裏側にもきれいなビードを形成ネジが詰まることが多いため、電動ドリ壁にかかっているのは管やコイルの曲がり具合を測る定規エルダー

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る