エルダー2023年3月号
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ことが「スキル開発行動」です。「今後どのようなスキルを開発していくか、具体的なアクションプランを持っているか」、「スキル・能力開発のために自己投資をしているか」ということです。自分らしいキャリアを実現するための学びは、主体的に行うことが重要です。例えば、いまの世の中には、正解のない仕事が山ほどあります。正解のないことを思いつくという能力が、さまざまな仕事で求められるようになってきています。ところが、学校教育はずっと正解型できています。また、日本では資格を取得することが尊重されています。そのための勉強が無駄とはいいませんが、資格試験の問題の多くは、「正解をこのなかから選びなさい」といったものが多く、試験勉強は丸暗記になりがちです。すると、勉強がおもしろくないわけです。対して欧米の資格試験は「自分の考えを述べよ」という内容が多く、自論を考えてアウトプットすることになります。できることなら、タテの関係で正解を教わるのではなく、ヨコの関係で自論をぶつけ、議論をすると、自分に抜けていた視点に気がついたりしますので、そうしたことをぜひ行っていく必要があると考えています。「主体的ジョブデザイン行動」、「ネットワーキング行動」、「スキル開発行動」、これら三つの行動が、自分らしいキャリアを自分で切り拓いてきた人の説明要因として、重要なものであることをお話ししました。ここからは、自分らしさの基本である「内的動機」という概念について、お話ししたいと思います。「内的動機」とは、一人ひとりが持っている心の機能の志向性のことで、「自分の内なる自然なドライブ」、「心の利き手」ともいわれます。ごく自然に無理なく使っている利き手があるように、心的機能にも、ごく自然に無理なく使ってしまうものと、意識して努力しないと使えないものがあります。「利き手ではないほうの手で名前を書きなさい」といわれても、上手には書けませんしストレスがたまります。心の利き手にも同じことがいえます。例えば、社交動機が強い人と弱い人の違いは、人見知りかどうかです。子どものころに人見知りだった人は、社交動機が弱い可能性が高くなります。つまり「初めて会った人と仲よくなりたい」と思う自然なドライブが無意識に出る人と、「できれば避けたい」と思う人の違いは、理由ではなく、心の利き手の違いなのです。いるともいわれ、大人になってから大きく変化することはほぼないとされています。「内的動機」自体に良い・悪いはなく、本人がどのように使い、成熟させるかが大切だといえるでしょう。は、達成動機、パワー動機、親和動機が共通してあるといわれます。自然体でこれらができる人はよいのですが、そうではない人がやろうとすると、利き手ではない手で朝から晩まで字を書くといった状況になり、非常につらくなります。人はみな違いますから、自分らしいキャリアは人をマネしていてはつくることができません。     9るとパワハラをしてしまいます。「自分はそう「復元動機」もあげられます。復元動機とは「打たれ強い」ということです。大失敗をしたり、怒鳴られたりしても「なにくそ、次こそうまくいくさ」というようなドライブです。気をつけたいのは、復元動機の強い人は、下手をすやって鍛えられた」、「ここまで成長できたのはそのおかげなんだ」と思っているので、よかれと思って部下を怒鳴りつけてしまう。しかし、その部下の復元動機が弱い場合はうまくいきません。「人はみな違う」ということをまず理解する必要があります。内的動機は、ゲノムや幼少期の影響を受けて例えば、リーダーによくみられる内的動機にリーダーによくみられる内的動機として、自分が自然にできることで価値が出せる働き方を模索する特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈東京会場〉エルダー

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