エルダー2023年3月号
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内的動機の話を本日しているのは、「仕事が向いているか、向いていないか」は、職務記述書と自分のスナップショットを合わせただけでわかることではないからです。例えば、営業職が向いているかどうか。社交的ではなくても、実は営業で使える内的動機はたくさんあります。達成動機が強ければ「だれも落とせなかった案件を自分がやるんだ」という気持ちになります。闘争心が強い人であれば「同期には負けない」という意欲が湧くでしょう。内的動機はいろいろあるので、「自分らしく自然体でパフォーマンスを出せる」、「自分らしい営業の仕方に出会えるかどうか」が問題なのであって、営業という職務記述書があって、それが自分に向いているか向いていないかではないのです。したがって、自己分析をしながら自分の得意技に持ち込んで、自分が自然にできることでほかの人たちにもバリューが出せるような、そんな働き方を試行錯誤していただきたいのです。大事なことは、自分自身の客観視やメタ認知※2です。自分ならではの専門性を持って最後に、たくさんの方にインタビューをした経験から、自律的キャリア形成に役立つと感じた話をいくつか紹介したいと思います。まず、「理解しても納得するまで考える習慣をつけていくこと」。その習慣が、普遍性の高い学びを生みます。そのためにも、原理原則や基礎理論、歴史的背景を理解することも大事です。また、「どう見られているかの前に、どう見られたいかを意識する」、「自己ブランドを確立する」ということも、自律的キャリア形成に役立ちます。人間力として、「あの人はこんなところが秀でているよね」といわれるような、仕事の個別性とは関係ないことも重要になってくると思います。それから、これからの時代は、「生涯追い続けるテーマや自分ならではの専門性を持って勉強し続けること」も重要だと考えています。これを私はキャリアの「背骨」と呼んでいます。何歳からでも、仕事をリタイアしてからでもよいのです。例えば、地政学の知識がベースにあると、ビジネスに活かせる場面もありますし、リタイアしてどこか旅行へ行こうというときにも、自分のテーマを持って勉強している人はより楽しめるでしょう。生涯を通して、主体的に勉強したいテーマを見つけて、ぜひ続けていただきたいと思います。それから、「二番目に得意なことを仕事にす           る」。これもけっこう大事なことです。一芸で生きていける人は少数ですから、最低でも二つ以上は得意なことをつくりたいものです。の広がりへの気づき」になります。受身的にキャリアを育んできた人は、ある程度の年齢になると、自分のキャリアの選択肢が狭まって見えてしまいます。ところが、越境学習などをして刺激を受けると、人生の選択肢が広がったような気になる瞬間というものが訪れます。重要なことだと思います。る」ことについてお話しします。取れているキャリアを歩めるかというと、かなりむずかしいでしょう。ワークとライフのいずれかに偏るフェーズはあるでしょうから、トータルでバランスが取れればよいのではないでしょうか。そのためには、「フェーズの節目のデザインが重要」になります。無駄なフェーズは一つもありません。必ず何かの意味づけがあります。後にふり返ったときに、自分の人生にとってどういう意味のあるフェーズにしたいか、それを考えていくとよいと思います。そして、「多様な人からの刺激が、キャリア最後に、「キャリアはフェーズで使い分け生涯にわたってワーク・ライフ・バランスが例えば、これからの3年間を、10年後、20年勉強し続けることが大事2023.310※2 メタ認知……自分の認知活動(考える、感じる、判断するなど)を客観的に認知すること

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