エルダー2023年3月号
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内田 はじめに、労働法がご専門の倉重先生から、今回のテーマである「70歳就業時代におけるシニア活用戦略」について、企業側から見る高齢者雇用の活用と、2021(令和3)年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)における法的課題について解説していただきたいと思います。倉重先生、よろしくお願いします。倉重 それでは、高齢法の法律的な意味や企業が行うべきことなどについて論点を整理してお話ししたいと思います。とっては高齢社員も含めて、いかに高いパフォーマンスで社員に働いてもらうかが課題になっています。そうしたなかで、高齢法では、新たに業務委託が含まれるようになったことが非常に大きな変化です。これにより、社員フリーランス制度を始めた企業もすでにあり、経理や財務といった間接部門のプロフェッショナルやコンサルタント、デザイナーなど、その業務内容は多岐にわたります。定年間近になってから、突然「あなたはフリーランスですよ」といってもできることではありせんので、企業には、現役時代からキャリア自律を意識し、キャリアの棚卸しと今後の方向性を常に考えさせる研修や能力開発などの支援が求められていくと思います。高齢者雇用における賃金水準の法的課題としては、考慮すべきことが2点あります。一つは「同一労働同一賃金」の観点。もう一つは、「高齢法の趣旨」に反してはいけないということです。高齢者雇用の考え方としては、どう活かす方向で処遇するか、また、70歳定年時代を見すえて高齢社員のキャリアをどう考えるか、現役世代との公平性をいかに図るか、高齢社員の「声」をだれがくみ取るのか、といった視点が大事になってきています。設計のあり方としては、①プロフェッショナル型、②ベテラン非管理職型、③現場のメンター型、④軽易定型業務型、⑤兼業あるいはフリーランス型などのパターンがあり、組み合わせて複数の制度を設ける事例が増えてきています。これまでは、60歳以降の賃金を一律カットするなど、「高齢者雇用制度は一つのみ」という事例が多かったのですが、いまは細分化してきています。正解があることではありませんが、こうしたことをふまえて取り組んでいくことが必そして、高齢社員の活用類型を加味した制度「70歳就業時代におけるシニア活用戦略」高齢者雇用を推進していくうえでの法的な課題とは令和4年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムパネルディスカッション特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈東京会場〉27エルダー70歳就業が視野に入ってくるなか、企業に11月25日70歳就業時代におけるシニア活用戦略

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