エルダー2023年3月号
30/68

要だと思います。また、今後は高齢社員の処遇をめぐる紛争が増えていくと思われます。高齢社員の役割を設定して処遇を決めたり、定年前と同じ仕事をする場合でも高齢社員の特殊性を加味して業務内容の何かを変えたりするほか、責任を減らす、原則として配置転換はないことを明記するなど、①「業務内容」、②「責任」、③「配置転換」の三つの視点からしっかりと考えていただきたいと思います。特に、同一労働同一賃金は紛争になりやすく、例えば「長澤運輸事件」※では、まったく同じ働き方をしているのに、定年後再雇用時の給与が下がっていることが問題になりました。結論だけを申し上げると、精勤手当については、正社員との職務の内容が同一である以上、両者の間で、その皆勤を奨励する必要性に相違はない。つまり「違ってはいけない」という判決でした。それ以外の、基本給、住宅手当、家族手当などに関しては、高齢者の特殊性というところを考えて、差異を設けることが可能という判断になっています。要は「説明がつかないものかどうか」ということだと思います。高齢法の趣旨をふまえたうえで、高齢者雇用の制度設計について企業ごとに考えるべきことは、一つめは定年後再雇用をどのように位置づけるのか。二つめは、定年後再雇用の賃金制度設計。三つめは、会社のパフォーマンスを高くするためにどう戦力化するのか。四つめは、「稼げる高齢者」になるのがカッコいい、というような事例を示していくこと。「このポジションだから偉い」ということではなく、自分は何ができるのかを常に考えさせる仕組みが重要になってくると思います。内田 定法の改正により、企業が高齢者を活かす選択肢が増えたと思っているのですが、倉重先生はありがとうございます。高年齢者雇用安氏氏氏氏2023.328東京学芸大学 教育学部教授内■■田■賢■■■コーディネーターパネリスト三谷産業株式会社 執行役員人事本部長佐■藤■■正■■裕■■株式会社USEN-NEXT HOLDINGS執行役員コーポレート統括部長住■■谷■■猛■■■特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会理事/弁護士倉■■重■■公■■太■朗■■※ 定年後再雇用されたトラック運転手が、正社員であるトラック運転手との賃金格差について会社を訴えた事件東京学芸大学教育学部教授の内田賢氏

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る