エルダー2023年3月号
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どのようにお考えでしょうか。倉重 そうですね。労働力不足のなか、企業によってどこまでやるか。温度感は違いますが、その温度差というのをむしろ認めて、企業によっては「こういった点を活かしていくぞ」というところが出しやすくなったと思います。内田 続いて三谷産業株式会社の佐藤さん、株式会社USENーNEXTHOLDINGSの住谷さんにもお話を聞いていきたいと思います。まずは倉重先生からご質問をお願いします。倉重 はい。さっそくですが、65歳以降の給与水準と、もし途中で契約を終了する場合、その基準などはどのように考えているのかお聞かせください。佐藤 賃金については、60歳のタイミングで少し下げていますが、65歳までは人事考課をして昇給する制度となっています。管理職だった人は役職定年になると、いったん賃金が下がりますが、時間外対象者になるため、残業すればきちんと追加でお支払いします。また、65歳を過ぎたときのタイミングで、賃金は再度見直しています。住谷 当グループでは、「60歳定年後、新たに採用する」という考え方で、正社員の無期雇用を行い、以降の定年が70歳ですので、契約終了という概念や基準はありません。65歳以降の給与水準も、その時点のその方の人材価値に応じた報酬を適正に査定評価して、適正な報酬を支払うことを徹底していますので、「人による」ということになります。倉重 ありがとうございます。内田 なってもいつまでも戦力であるために、会社が一貫して進めていくこととして、どのようなことがありますか。佐藤 当社が意識しているのは、60歳を節目として、自分の仕事ぶりや今後の働き方を見つめ直してほしいということです。キャリア研修を通じてそのきっかけをつくっていますが、最後はやはり自分で考えてほしいという会社の思いを、全社員に発信しています。住谷 社員に対して自発性を期待しているということを、しっかり伝えていくことが大事だと思います。究極的には個々人が自分のキャリアをしっかり見つめて、自分自身の人材開発をしていく。それを自発的に行っていくことが大切だと思います。会社がそのためにできることは、結構むずかしいのですが、ただ、そこに期続いて私からの質問ですが、シニアにシニアになっても戦力であるために会社が一貫して進めていくことは特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈東京会場〉29◎創業 1928年◎業種 卸売◎社員数  (連結)3,805人(単体)582人(2022年3月末日現在)◎特徴的な高齢者雇用の取組み定年60歳、年齢上限なく再雇用。60歳定年後、「無期限の継続雇用制度」を新たに導入した。定年後も年2回の人事考課を行い、定年後65歳までは「マスター正社員」として昇給・賞与を支給、66歳からは評価基準に照らし1年ごとに契約を更新する「マスター嘱託社員」として賞与を支給する(2022年8月末時点)経営者側労働法専門弁護士として労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。2022年、週刊東洋経済・弁護士ドットコム共同調査による「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」人事・労務部門第1位。主な著書に、『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか』(労働調査会、著者代表)、『【改訂版】企業労働法実務入門』(日本リーダーズ協会、著者代表)(石川県金沢市・東京都千代田区)エルダー登壇者・登場企業プロフィール株式会社USEN-NEXT HOLDINGS◎設立 2009年◎業種 専門サービス業◎社員数  4,846人(連結)◎特徴的な高齢者雇用の取組み 定年70歳。2019年9月にスタートした「定年延長制度」では、60歳定年後、希望者には人材価値の再査定をして再オファーを行い、再雇用契約を結ぶ。その後は、70歳まで正社員として働くことができる。1年に一度、評価・査定を実施し、報酬に反映させている(東京都品川区)特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会理事/弁護士三谷産業株式会社倉重 公太朗氏

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