エルダー2023年3月号
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健康や体力の状況の把握とそれに応じた対応安全衛生教育危険度と発生の可能性を考慮して、分析していくという手法がとられます。職場環境の改善の観点からは、身体機能の低下を補う設備・装置の導入(ハード面)と高齢労働者の特性を考慮した作業管理(ソフト面)の対応が求められています。ハード面については、図表2のような事項、ソフト面については図表3のような事項があげられています。3雇い入れ時および定期の健康診断を確実に実施することが重要視され、特定健康診査などを受ける意思を高齢労働者が有している場合には、そのための勤務時間変更や休暇の取得などの対応をすることや、法令における健診義務の対象外であっても健康診断の対象として対応すること、産業医や保健師などとの相談体制を整備することなどがあげられています。また、日常的なかかわりのなかで把握することも重要です。体力の把握は、高齢労働者を対象とした体力チェックを実施することが推奨されています。体力チェックのなかでは、加齢による心身の衰え(フレイルチェック)を導入することや「転倒等リスク評価セルフチェック票」(厚生労働省が公表しているもの)を活用することが想定されています。して就業上の措置を講じることとされており、加齢にともなうリスクの増大をふまえて、労災認定基準にも照らしつつ、過重な時間外労働や心身の負担を回避することに配慮が必要となります。適切とはいえず、個人差も大きいことから、作業内容の見直しは労働者の了解を得られるように努めることとされています。そのほかストレスチェックの実施とその結果をふまえた面接指導などを通じて、健康維持に努めることも重要です。4高全衛生に関する教育を実施することが求められています。高齢労働者自身には、加齢とともに自身のリスクが高まっていることを自覚してもらうことに意義があります。会社が実施しようとする健康診断の推奨や体力チェック、ストレスチェックなどによる状況把握は、高齢労働者本人の自覚が重要です。働者に特有の特徴(リスク)やそれに対する対応策を理解し、労災発生による管理監督者の責任、会社経営に及ぼすリスクを把握してもらうことで、積極的に運用面での把握した健康や体力の状況は、それを活かなお、過度に業務内容を減らすこともまた齢労働者および管理監督者に対して、安管理監督者への安全衛生教育は、高齢労47エルダー図表3 職場環境改善(ソフト面)の例図表2 職場環境改善(ハード面)の例共通的な事項暑熱作業への対応情報機器作業への対応※ 「エイジフレンドリーガイドライン」(厚生労働省)を基に筆者作成勤務形態や勤務時間を工夫する(短時間、隔日、交替制など)、ゆとりあるスピードまたは無理のない姿勢などに配慮した作業マニュアルを用意する、注意力や集中力を要する作業については作業時間や優先順位の判断を考慮する、腰部に過度の負担がかかる作業の軽減、身体的な負担に対して定期的な休憩の導入や作業休止時間の運用など意識的な水分補給の推奨、健康診断結果をふまえた体調確認と日常的な指導、病院への搬送や救急隊の要請を行う体制の整備など過度に長時間にわたり行われることのないようにする、作業休止時間を適切に設ける、相当程度拘束性がある作業(データ入力等)では無理のない作業量とするなど共通的な事項危険を知らせるための視聴覚に関する事項暑熱な環境への対応重量物取扱いへの対応介護作業等への対応情報機器作業への対応※ 「エイジフレンドリーガイドライン」(厚生労働省)を基に筆者作成段差の解消、手すりの設置、墜落防止器具、滑りやすい箇所などの解消または注意喚起など警報音等は中低音域を採用する、指向性スピーカーの利用、騒音の低減など涼しい休憩場所の整備、通気性のよい服装の準備、熱中症の初期症状を把握できるIoT機器の利用など補助機器などの導入、不自然な作業姿勢の解消、身体機能を補助する機器の導入などリフト、スライディングシートなどの導入、労働者の腰部負担を軽減する機器の活用など照明、画面における文字サイズの調整、必要なメガネの使用など知っておきたい労働法AA&&Q

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