エルダー2023年3月号
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今回は、正社員と非正規社員について取り上げます。広く社会に浸透し、あたり前のように日常で使われている用語ですが、その定義は必ずしも明確ではありません。正社員も非正規社員も法律上の用語ではなく、複数の雇用形態のうち、一般的に認知された通称といえるものと考えています。イメージを具体化していくために、雇用形態について代表的なものの解説から始めます。①雇用期間…労働者が雇用される期間の定めのない無期雇用(満60歳以降の定年設定は可)と、定めのある有期雇用(原則、最大3年。更新可)の区分あり。②労働時間…企業が定めている所定労働時間(原則、最長1日8時間、週40時間)のすべての時間を働くフルタイムと、より短い時間で働くパートタイムの区分あり。③雇用元…勤務先の企業と労働者間で雇用に関する契約を結ぶ直接雇用と、勤務先とは別の企業と労働者間で契約を結ぶ間接雇用の区分あり。これら三つの形態のうち、正社員は①無期雇用、②フルタイム、③直接雇用の組合せと一般的に認知され、厚生労働省の資料などをみても、おおよそこの組合せを基本とした記述になっています。一方で、非正規社員は正社員以外の労働者を括る用語であり、雇用形態上は①有期雇用、②パートタイムまたはフルタイム、③直接雇用または間接雇用が一般的に認知されている組合せとなります。さらに細かい形態の差異により、非正規社員はパート・アルバイト・契約社員・嘱託社員・派遣社員などと区分されます。いるのには理由があります。実は、これらの組合せから外れる正社員・非正規社員が存在するからです。例えば、働き方改革の一環として多様な正社員が推奨されるなかで、②がパートタイムにあたる短時間正社員制度を導入している企業があります。また、有期雇用契約が更新されて通算5年を超えた場合に、労働契約法に基づき労働者本人からの申し込みにより①の無期雇用に転換した後も、その他の労働条件に変更がなく、会社内で正社員として位置づけられない場合は、無期雇用の非正規社員が発生します。これらはあくまで一例ですが、ほかにも多様な形態の正社員・非正規社員が存在し、一般的な認知を基本としつつ、最終的には各企業が正社員・非正規社員の定義を就業規則等で定めてい先ほどから「一般的な認知」と逐一記載して定義は必ずしも明確ではない2023.352株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。第32回「正社員と非正規社員」■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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