エルダー2023年3月号
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を開設し、注文婦人服を仕立てるかたわら、洋裁教室を開いて後進の育成も行っている。洋裁を始めたきっかけは、結婚後に夫の実家が営むアパレルメーカーで縫製を手伝うようになったことだった。「最初の一年ほどは、お直しのために戻ってきた商品の袖口や肩などの〝ほどき〟ばかりやっていました。それから少しずつミシンをいじらせてもらえるようになり、次第に、私のような素人の手がけたものがお客さまに届くのは嫌だなと思うようになったんです」そこで、技術専門校の夜間コースに半年間通った後、「現代の名工」である洋裁の先生に師事し、洋裁の基本を一通り習得。2002年に洋裁技能の国家検定1級に合格した。家業の手伝いを続ける一方、知り合いなどから仕立てを頼まれるようになり、自身のブランド立ち上げに至った。「夫の会社で既製服の製造にたずさわってきたので、効率のよい段取りを注文服の製作にも取り入れています。例えば、順番通りの作業ではなく、ミシンやアイロンをかける部分はまとめてかけたり、ミシンでできるところはなるべくミシンですませます。そうした工夫が、時間短縮と仕上がりのよさにつながっているように思います」佐藤さんが得意とするのは、着物から洋服へのリメイク。着物に使われている生地や柄などの特徴を活かして洋服に仕立て直す。「留袖などのお祝い着は柄が華やかなので、カジュアルな形ではなくワンピースにしたり、大島紬のように伸縮性の低い着物は、あまり体にフィットしたものではなく、ジャケットやコートなどにすることをおすすめしています。また、洋服にすると帯や帯留めなど異なる柄の生地でも違和感のない柄合わせを実現62ミシンで2枚の布を重ねて縫うと、上の布は押さえられ下の布は送り歯で送られるため、必ずずれが生じる。練習を重ね、ずらさず縫うコツを体で覚えた「洋裁は扱う布や糸によって『手加減』が必要。そのコツがつかめるように、やって見せながらわかりやすい説明を心がけています」

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