エルダー2023年3月号
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(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)で差し色ができないため、地味になりすぎないような工夫もします」着物は洋服と違い、生地の幅が一尺︵鯨尺・約38㎝︶という制約がある。また、前合わせの違いや、カットされている部分もあるため、柄合わせがむずかしい。佐藤さんは、型紙を生地にあてながら最適な柄合わせを考え、隣り合う生地の柄が異なっていても違和感のないデザインに仕立て上げる。それを可能にしているのは、型紙、裁断、縫製など、一つひとつの技術の正確さだ。特徴的な技術の一つに「きりびつけ」がある。型紙から生地に印をつける際に、チャコやヘラの代わりに糸で印をつけていく方法だ。手間はかかるが、生地を傷めず、補正もしやすいというメリットがある。佐藤さんは自身の洋裁教室に加えて、一般社団法人日本洋装協会の講習会で技能検定を受ける人たちの指導にもあたっている。「洋裁で大切なのは手の感覚です。例えば、生地の継ぎ目に少しゆとりを加えることを﹃キセをかける﹄といいますが、キセの幅は常に同じではなく、生地の素材や厚みなどによって手加減を加える必要があります。教えるときには、自分自身が学んだ経験も活かしながら、なるべく早くコツがつかめるように、手の動きを見せてあげながら、言葉でもわかりやすく説明するように心がけています」ファストファッションがあたり前となった昨今、洋裁人口は減少傾向にある。そんななかで佐藤さんは、一人でも多くの人に洋裁の楽しさを知ってもらい、職業にできるように後進を育てていきたいと奮闘している。自分の手で思い通りにつくれる楽しさを伝えたい -ilJ-flora@castlEmaocn:e..pne.j洋服のリメイク&リフォームJフローラTEL:03(3357)728363エルダー vol.325先が曲がった目打ち(中央)を愛用着物の袖の柄をそのまま活かしたドレス。胸の部分には青い名古屋帯を使用目打ちを使って布の端を押さえる留袖をワンピースにリメイク中。柄の切れ目を上手に合わせているバラした生地の上に型紙を置きながら、柄の合わせ方を検討する下部の柄が合っているため上部の柄の切れ目が気にならない令和4年度「卓越した技能者」の楯。「身に余る光栄」と佐藤さん

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