エルダー2023年4月号
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副業解禁で企業に必要なのは個々の社員を尊重する働き方ホームとアウェイを行き来して学びを得る会社は、副業解禁によって、何をねらって――8期待が低下していると考えざるを得ません。もいるのでしょうか。石山 これまで多くの企業で、就業規則の定めとして社員の副業を禁止していました。しかし、業務上の秘密を洩らしたり、自社の利益を害するような競業に従事したり、あるいは副業をすることで社員が自社での働きを全うできない、会社の名誉が損なわれるなどがある場合を除けば、そもそも会社には社員の副業を禁止する権限はないのです。会社と社員が労働契約で決めた所定の労働日・労働時間以外のところでは、社員は何をしても自由だし、会社も規制する権利はないはずです。こうしたことをふまえると、副業を解禁した企業のなかにも、疑問を呈したくなるようなケースが見受けられることがあります。一つは、「副業できるのはシニアのみ、あるいはミドル・シニアのみ」とし、若手や中堅は、これまで同様に副業は禁止するというものです。こうしたケースでは、ミドル・シニアへのう一つは、「年齢にかかわらずすべての社員を対象に副業を解禁する。ただし、副業は会社の加えて、そこにコロナ禍が起こり、毎日職場に出勤する働き方に制約が生じました。しかし、やむなく在宅でのリモートワークを取り入れてみると、案外それでも仕事が回るし、むしろ生産性が高まるなどの利点があることもわかってきました。そうすると、例えば、新しい仕事で自分のキャリアを発展させたいと思っている場合でも、いまの会社に在籍したままでリモート副業すればよいわけです。つまり、リモート副業の可能性が一気に高まってきたのです。有意義なサードエイジを送りたいという意識の高まりと、柔軟な働き方の選択肢を増やす働き方改革を進めようという社会の動き、そして働く時間や場所を問わない働き方の可能性を広げるITの進展。このような環境の変化が、副業への関心を高め、かつその働き方が、副業が絵空事ではなく現実的な選択肢となりつつあることの背景にあります。副業をしたい人のニーズと、副業の形で人材を受け入れたい企業のニーズをマッチングするビジネスも出てきました。一人を100%雇用するのではなく、副業の形で50%やそれ以下であっても人材を確保したい。そういう企業が現れたために、需給のマッチングがビジネスとして成り立つ環境が生まれたのです。利益になるもの、会社の業績に貢献するものにかぎる」というものです。反対で望ましくないことはいうまでもありませんが、後者のタイプも大いに問題があります。基本的に、就業時間外は社員は何をやっても自由なのです。副業の内容も、秘密保持義務や競業避止義務に反するなどの場合を除けば、本人の選択に委ねるべき問題です。会社の業務や業績への貢献という物差しをあてるのは筋違いで、育児休業を、会社の役に立つかどうかで認めるのと同じくらい、おかしなことです。るのは当然のことですが、社員がもともと持っている権利を、会社が与えたかのように取り違えて、その行使の仕方を会社が支配する。それは会社に悪意がないとしても、会社と社員の関係を間違えてとらえているといえます。会社が、親子関係のように社員を保護や支配の対象ととらえるパターナリズムの表れです。何でしょうか。石山 前者のタイプが、社員を尊重する経営とは正もちろん、会社が社員に自社への貢献を求め企業が社員の副業を解禁するメリットとはメリット・デメリットという考え方その

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