エルダー2023年4月号
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労務管理と企業の安全配慮義務労務管理上の主な留意事項を行うか否かについては、職場秩序に影響が及んだか否かなどの実質的な要素を考慮したうえで、あくまでも慎重に判断する必要があります。労働契約法第5条において、「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(安全配慮義務)と定められており、副業の場合は、副業を行う労働者を使用するすべての企業が安全配慮義務を負います。例えば、企業が労働者の全体としての業務量・時間が過重であることを把握しながら、何らの配慮をせず、労働者の健康や安全に支障が生ずるに至った場合などは、安全配慮義務を問われる恐れがあります。企業には、安全配慮義務の履行をふまえて労務管理の施策に取り組むことが求められます。(1)労働時間管理労働時間管理には、以下の二つの方法が認められています。①原則的な方法労働基準法第38条第1項では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。労働基準局長通達(昭和23年5月14日付け異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含むとしています。したがって、副業・兼業先で雇用契約を認める場合、原則として、本業・副業各々における労働時間の通算が必要となります。この場合、図表2の順序に基づき、労働者の申告などにより、それぞれの使用者が自らの事業場における労働時間と、他の使用者の事業場における労働基発第769号)では、「事業場を時間を通算して管理する必要があります。②管理モデルることは、本業や副業の企業、労働者にとって、煩雑であり相当な負担になります。そこで導入されたのが、簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)です(図表3)。実際、この方法で労働時間を通算して管理す 所定労働時間所定労働時間• ③本業における所定外労働時間または副業・兼業での所定外労働時間(実際に行われた順)12https://www.mhlw.go.jp/content/001018385.pdf出典:田代英治「副業・兼業導入に向けた制度設計のポイント」『人事の地図』2022年11月号、産労総合研究所図表2 労働時間通算の順序(①⇒②⇒③)• ①本業(先契約者)での• ②副業・兼業(後契約者)での図表1 厚生労働省「モデル就業規則(令和4年11月版)」モデル就業規則(副業・兼業)第70条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。   2  会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。① 労務提供上の支障がある場合② 企業秘密が漏洩する場合③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合④ 競業により、企業の利益を害する場合所定労働時間所定外労働時間

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