エルダー2023年4月号
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管理モデルとは、副業の開始前に、先に労働契約を締結していた使用者Aの事業場における「法定外労働時間」と、後から労働契約を締結した使用者Bの事業場における労働時間(所定労働時間および所定外労働時間)を合計した時間数が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定し、各々の使用者がそれぞれその範囲内で労働させることです。先に労働契約を締結した使用者は「自らの事業場における法定外労働時間分」を、後から労働契約締結した使用者は「自らの事業場における労働時間分」を、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払うこととされています (図表4)。副業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させるかぎり、ほかの使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく、労働基準法を遵守できるようになります。(2)健康確保措置ることで、副業による過労で健康を害したり、現在の業務に支障をきたしていないかを確認することが望まれます。副業の結果、労働時間通算の対象となる場合には、左記の事項を確認することで過労防止が可能となります。次の措置を採ることも効果があります(図表5)。(3)労災保険適用上の留意点「複数就業者」)に、万一、労働災害が発生した  (例:36協定の切り替え時期に合わせるな労働者本人と緊密なコミュニケーションをと間、始業・終業時刻み時間数、最大時間数の手続きど、定期的に確認する)また、労使による協議や副業先との連携により複数の会社に雇用されている労働者(以下、B割増賃金ORA所定A所定以外B労働時間通算して適用される時間外労働の上限規制(月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件)を遵守する必要があることから、これを超過しない範囲内で設定法定労働時間Bに36協定がある場合、36協定の範囲で副業・兼業可能13出典:田代英治「副業・兼業導入に向けた制度設計のポイント」『人事の地図』2022年11月号、産労総合研究所出典:厚生労働省『「副業・兼業促進に関するガイドライン」パンフレット(令和4年10月3日改訂版)』https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000996750.pdf図表3 原則的な方法から「管理モデル」へ副業・兼業の日数が多い場合や自らの事業場およびほかの使用者の事業場の双方において所定外労働がある場合など➡ 労働時間の申告等や通算管理において、労使双方に手続き上の負担がともなうことが考えられる。原則的な方法労働時間の申告等や通算管理における労使双方の手続き上の負担を軽減し、労働基準法に定める最低労働条件が順守されやすくなる簡便な労働時間管理の方法管理モデル図表4 管理モデルのイメージAに所定外労働がある場合(A・Bで所定外労働が発生しうる場合に、互いの影響を受けないようあらかじめ枠を設定)A割増賃金は、Aにおける現在の取扱いにあわせ、所定超or法定超に支払う(オ)これらの事項について確認を行う頻度(エ) 副業・兼業先における実労働時間等の報告(ウ) 副業・兼業先での所定外労働の有無、見込(ア) 副業・兼業先との労働契約の締結日、期間(イ) 副業・兼業先での所定労働日、所定労働時

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