エルダー2023年4月号
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労災認定される場合の認定方法について理解しておくことが重要です。複数就業者が安心して働くことができるような環境を整備するため、「雇用保険法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第14号)により、一つの事業場で労災認定できない場合は、事業主が同一でない複数の事業場の業務上の負荷(労働時間やストレスなど)を総合的に評価して労災認定が行われます(図表6)。(4)秘密保持、競業禁止、誠実の各義務履行労働者には秘密保持、競業禁止、誠実の各義務があり、その履行のために使用者は、図表7のポイントについて、日常業務のなかで折に触れ注意喚起することが重要です。(5)そのほか労働基準法の労働時間規制、労働安全衛生法の安全衛生規制などを潜脱するような形態や、合理的な理由なく、労働条件などを労働者の不利益に変更するような形態で行われる副業は認められません。例えば、実態は使用者との一つの労働契約であるにもかかわらず、その一部を形式上請負契約にする形態などが考えられます。違法な偽装請負の場合や、請負であるかのような契約としているが実態は雇用契約だと認められる場合などにおいては、就労の実態に応じて、労働基準法、労働安全衛生法などにおける使用者責任が問われます。負荷の総合的評価の具体例Bの負荷を評価して判断定義注意喚起のポイント業務上の秘密となる情報の範囲および業務上の秘密を漏洩しないこと副業を行う労働者に対して、禁止される競業行為の範囲や、自社の正当な利益を害しないことについて注意喚起することまた、他社の労働者を自社でも使用する場合には、当該労働者が当該他社に対して負う競業避止義務に違反しないよう注意喚起を行うこと自社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為をしないこと労災不認定労災不認定A及びBの負荷を個別に評価→いずれの会社についても労災認定できない場合は、AとBの負荷を総合的に評価して判断14※筆者作成出典:厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付わかりやすい解説」https://www.mhlw.go.jp/content/000662505.pdf※筆者作成通算して適用される時間外労働の上限規制(月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件)を遵守する必要があることから、これを超過しない範囲内で設定図表7 秘密保持、競業避止、誠実の各義務履行図表6 複数就業者の労働災害認定会社A会社B図表5 健康確保措置の留意点義務秘密保持義務使用者の業務上の秘密を守ること在職中、使用者と競合する業務を行わないこと競業避止義務誠実義務使用者の名誉・信用を毀損しないなど誠実に行動すること<労使の協議による>ア) 労働者に対して、健康保持のため自己管理を行うよう指示します   (例:副業・兼業を開始する際に、副業・兼業に関する社内ルールを明示するなど)イ) 労働者に対して、心身の不調があれば都度相談を受けることを伝えます   (例:メンタルヘルスの相談窓口や産業医との相談体制など、すでに設置している相談体制やそれらに関するルールを活用)ウ) 副業の状況もふまえ、必要に応じ法律を超える健康確保措置を実施しますエ) 自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いのなかで、時間外・休日労働をコントロールします   (例:副業・兼業先での労働時間等について労働者からの申告などにより把握し、社内の状況もふまえて、時間外・休日労働の免除や抑制などの措置を検討)<副業・兼業先との連携>オ) 使用者の指示により副業を行う場合、使用者は、原則、副業先の使用者との情報交換により、自社の労働時間と通算した労働時間に基づき、健康確保措置を実施するようにしますAの負荷を評価して判断(改正前)(改正後)

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