エルダー2023年4月号
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活躍のカギは「キャリア自律」副業で社員の成長・自己実現をサポート副業によって「ひとづくり」にたずさわることで自分自身も成長する「60歳以降も社員としての役割に期待をかける以上、それに見合った報酬で報いないとモチベーションも上がりません。モチベーションが上がらなければ、『ほかによい条件のところがあれば…』という気持ちにも当然なりかねない。そこで今回、一律役職定年の廃止にふみ切りました」と菊岡部長は説明する。同社では、60歳一律役職定年廃止とともに、2022年度より「越境キャリア支援制度」を導入した。本業と異なる分野での副業など、社内外での「越境体験」にチャレンジする社員を支援する制度だ。越境体験を通じて知見を広げ、自身のキャリア形成について考えてもらうことで、社員の「キャリア自律」につなげていくのが目的だという。「70歳まで働く時代。会社から与えられるものを待っているだけではその長い時代は完走できないと思います。生涯にわたって活躍していくためには、個人それぞれが自身のキャリアをどうデザインして描いていくかが重要です」と、菊岡部長は、「キャリア自律」の必要性を強調する。同社では、営業・管理系の職種、技術系の職種それぞれでスペシャリスト志向が強く、一人の社員が複数の職種や事業を経験するケースは少ない。社員自身が自律的にキャリアについて考えるきっかけが、あまり多くはないという課題があったという。「社員の成長や自律をうながす場や機会を、会社として十分に提供できているとはいえない状況でした」と、菊岡部長はふり返る。越境キャリア支援制度では、現状の課題意識をふまえ、①社員の自律や成長につながる挑戦機会(越境体験)の提供、②新しいスキルの習得や人脈の形成など個人のキャリアの幅を広げる機会の提供、③多様な価値観を尊重し、活かすことができる組織開発の推進、この三つに主眼を置いた取組みを進めている。支援制度の対象となるのは、若手からシニア層を含めた全社員だ。具体的には、「社外の業務にたずさわる副業」、「現所属のまま他部署の業務やプロジェクトなどにたずさわる社内副業」、「異業種への出向」のほか、異業種との協働プロジェクトにたずさわる「共育&共創活動参画」などが行われている。今後はさらに、「スタートアップ派遣」、「社内起業家育成・支援」といった実務系メニュー、「サバティカル休暇」、「キャリア自律教育」などの研修系支援メニューの充実も予定しているという。社外の副業には、「申請型」と「公募型」の二つのメニューが設けられている。「申請型」は、個人が見つけた副業先での副業を申請により認めるもの。制度が始まったばかりだが、すでに10人を超える社員から申請があり、インテリアデザイン、製図指導の補助、スマートシティプロジェクトへの参画、都市計画審議会委員としての活動、不動産活用のコンサルティング、社会保険労務士法人の開設などの副業実績がある。地方創生や地域貢献にかかわる分野が多いのが特徴だという。「公募型」では、会社が斡旋する副業先で副業を行う。実際に行われたケースでは、会社と技術系専門学校の提携により、40代の社員2人が副業として非常勤講師を務めた。1人は技術系社員で、建築にかかる工事費の見積もり額を算出する積算の業務が本業。もう1人は現場の施工管理業務をになっている。社員が副業としてかかわることで、社員自身の成長にもつながればとの思いがあるという。また、今回副業を経験した2人が、将来的にマネ現在、越境キャリア支援制度で実施している会社としては、教育という「ひとづくり」に16

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