エルダー2023年4月号
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高齢社員に期待する役割は経験と結果を結びつけた技術伝承(ミドルシニアコース)を受講して生産性向上支援訓練的に対応していきたいと考えています。「人を育て、技術を育て、事業を育て、豊かな社会の実現に貢献する」。これが当社の経営理念です。設計会社における実力や成長、発展は、社員のレベルアップによるところが非常に大きく、人材がとても重要で大切な財産であるととらえています。人材確保については、若手人材の継続的な確保、そして社員の継続的・計画的な教育・育成に重点を置いています。若い芽は豊かな土壌で光・水・栄養を吸収して、大きく成長します。会社についても、恵まれた職場環境、安定したプライベート、計画的・継続的な教育の提供によって、「社員にやさしい、家族にやさしい、女性にやさしい」という当社のアピールポイントを表現して、幅広く伝え、入社したい会社、入社してよかったと思える会社になることを目ざしています。新入社員は入社後、それぞれの部門に配属され、技術や製品に関する専門的な教育を行っています。また、考える力やコミュニケーション力、行動力といった、部門に関係なく身につけてもらうスキルについては部門の垣根を超えて教育を行っており、両方の教育でバランスよく、より広く、深く、人材を育成していく取組みを実施しています。新入社員や新人の教育が実を結ぶのは、5年後、10年後になりますので、直近の人材確保、維持・継続という意味では、ベテラン社員ががんばってくれることが、大きな意味を持っています。ベテラン社員は入社以来、技術や経験を身につけて努力を重ねてきており、それらは継承していくべき非常に大事なものとなっています。実際に、図面や資料の標準化、技術計算の自動化、工事の実績データベース化などによって蓄積されています。しかしそこには、技術の根拠であるとか、ノウハウの確立の経緯といったエビデンスは含まれていません。結果のみが蓄積されている、というのが現実です。実際には、いまの技術にたどり着くまでに費やした長い年月のなかで、数かぎりない大小の失敗をくり返しており、そういった経験が大事になってきます。経験と実際の結果を結びつけて将来につなげていくことに意味があると考えており、高齢社員には、若手と一緒に仕事をするなかで、この技術を伝承していく役割を強く期待しています。よって受注が減少するなかで、社員の雇用を守るため、雇用調整助成金の対象である「技能、技術の習得や向上を目的とした教育訓練」を実施しました。そのなかで利用したのが、「生産性向上支援訓練」です。データ活用、組織マネジメント、生涯キャリア形成(ミドルシニアコース)の各訓練を受講しました。受講の決め手となったのは、企業の課題やニーズにあわせてオーダーメイドでコースがつくれること、企業が求める内容での受講ができることです。めに受講したのが、ミドルシニアコースです。訓練実施時期は、2020年10月から12月までで、延べ87人が受講しました。内容は「職業能力の整理とノウハウの継承」、「後輩指導力の向上と中堅・ベテラン従業員の役割」、「職業能力の体系化と人材育成の進め方」です。これにより、①社内の部門間で技術伝承についての情報共有、②仕事や組織力の見える化と継承すべき具体的な項目の整理、③後輩への接し方と相互理解の3点が促進され、社内の活性化という成果につながりました。2020年、新型コロナウイルスの影響に高齢社員による技術伝承の課題に取り組むた特集2生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム25エルダー

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