エルダー2023年4月号
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氏氏氏氏加齢による心身機能の変化について、20〜24歳の能力を100%としたときに、55〜59歳ではどれくらいかというと、機能により差はありますが、「約2割低下する」という結果が示されています※2。もっとも落ち込んでいる項目は、「夜勤後の体重回復」で、7割近く低下するという状況です。つまり、いろいろな意味での回復力というものが、年を重ねるにしたがって落ちていくということが表れています。また、「平衡機能」、「皮膚振動覚※3」、「聴力」、「薄明順応」などのいわゆる感覚機能も、かなり低下することが示されています。感覚機能は自覚が生じにくく、聴力に関しては、高い音が聞こえにくくなってくるのですが、気づきにくいといわれています。こういった点が、労働災害につながってきます。先ほどもお話しした通り、加齢にともないリスクが高まる労働災害として、「転倒」、「墜落・転落」があげられます。若い人でも転ぶのですが、高齢になると、転びやすいだけでなく、バランスを崩してそれを支える力が低下し、また、骨の強度が弱くなっているため、結果的に骨折するなど重篤化のリスクが高まります。滑って後頭部を打ちつけるといったことになれば、死亡災害にもつながりかねません。高齢労働者の安全と健康確保のためのガイドラインとして、国は指針として「エイジフレンドリーガイドライン」を策定しています。そのなかで、エイジフレンドリーな職場のポイントとして、次の4点をあげています。①高年齢労働者を重要な戦力としてとらえ、そ②高年齢労働者に配慮した、職場環境改善を進③高年齢労働者自身が、体力や健康状態と労働④管理監督者や周囲の者が、高年齢労働者の特100の取組みを盛り込んだ「エイジアクション100」※4というチェックリストがあります。職場の課題を洗い出し、改善に向けた取組みを進めるための職場改善ツールです。「転倒等リスク評価セルフチェック票」※5というツールもあります。「自分の体力に対して過信をしているのではないか」と思われる社員の方などにも有効なツールですので、ぜひ活用していただきたいと思います。もあります。健康状況については、職場のなかの知識・経験を活かしているめている災害リスクの関連を理解し、安全行動に努めている性を理解し、ともに快適に働けるよう努めているまた、高齢労働者の安全と健康確保のためのそのほか、10項目の「健康チェック」ツール東京学芸大学 教育学部教授内■■田■賢■■■コーディネーターパネリストポラスグループ ポラス株式会社 人事部長石■■田■茂■■■日鋼設計株式会社 取締役総務部長山■■下■■法■■夫■中央労働災害防止協会 健康快適推進部 審議役・衛生管理士三■■觜■■明■■■特集2生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム27※2 斉藤一、遠藤幸雄「高齢者の労働能力」『労働科学叢書53』労働科学研究所(1980年)※3 皮膚振動覚……皮膚への刺激により生じる感覚。痛覚、圧覚、温覚など※4  「エイジアクション100」https://www.jisha.or.jp/research/pdf/202103_01.pdf※5 「転倒等リスク評価セルフチェック票」https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/content/contents/000668561.pdfエルダー

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