エルダー2023年4月号
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―日本の高齢者雇用の現状や、課題についてお考えをお聞かせください。―定年の前に「役職定年」でもモチベーションが低下するともいわれていますね。は、従来の年功型賃金体系ではむずかしそうです。どのような仕組みがよいのでしょうか。―一気通貫の賃金制度を構築するために働く人は年齢関係なくみんな「現役」国の方向性や考え方を否定するわけで上野 はありませんが、長野県にある中小企業の経営者や人事担当者の話を聞いていると、正直なところ、国が行おうとしている理想と、企業の現実との間には、大きなギャップがあるように思います。ギャップを解消するには、企業と高齢社員双方の意識改革が必要です。よく「福祉型雇用」といういい方がなされますが、定年後は一律で給料を下げて横並びで全員を雇うという方法には限界があります。高齢者雇用における大きな問題の一つが、定年前の正社員と定年後再雇用の社員で、賃金制度が分断されていることです。また、60歳以前の人を「現役世代」と呼ぶ風潮がありますが、働いている60歳以降の高齢者も「現役」なのです。こうした意識の分断も含めて解消していくためにも、60歳前と60歳以降も一気通貫の賃金制度を構築することが必要だと考えています。一方、高齢社員からは、「定年後も再雇用で会社が面倒をみてくれるし、お客さまでいいんだ」という意識も垣間見られます。再雇用で働き続けるのに、定年時に退職金をもらって気持ちがリセットされてしまうと、会社から「いままで通りがんばってください」といわれても、働く意欲が失われる傾向もあります。そういう意味では、「定年」という制度そのものをどう考えていくのか。企業側の意識改革も必要だと思います。上野 がない場合、ポストが空かず、組織の新陳代謝が進まないという問題点もあります。役職定年制度を完全に否定するわけではありませんが、シニアを活用していくという観点では、これまであたり前とされてきた、「一律年齢での役職定年制度」の転換も必要でしょう。その通りです。しかし、役職定年制度上野 では、60歳の定年まで年功型賃金で、60歳定年後の再雇用では賃金を一律で3割下げるなどの対応が行われてきました。一気通貫の賃金制度とするためには、ジョブ型雇用・ジョブ型賃金に転換していく必要があると考えています。「職務評価」という手法を使い、職務と賃金を紐づけたジョブ型の賃金体系を導入し、60歳前と60歳以降を一本化するのです。型賃金を適用することには消極的です。若い間はいろいろな仕事を経験して、自分がやりたい仕事を見つけるための自分探しの旅も必要です。若い間は職能資格型の賃金制度で運用し、中年になってからジョブ型の賃金制度に移行していく形がよいのではないでしょうか。歳からジョブ型に移行する仕組みを導入しています。具体的には、45歳までの給与は職能資格的要素が大きなウエイトを占めており、方、職務給のウエイトを徐々に高め、60歳にこれまでの一般的な定年後再雇用制度ただし、若手社員にジョブ型雇用・ジョブ私が知っているある製造業の会社では、452023.42松本大学 人間健康学部スポーツ健康学科 教授上野 隆幸さん45歳を区切りに年功要素を徐々に減らす一60歳以前の人を「現役世代」と呼ぶ風潮

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