エルダー2023年4月号
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定年後は5年間の継続雇用となり、調査研究報告書の校閲、教育講座の受付や試験の監督などに従事する。図書館の業務も引き続き担当して後進の育成にも力を注いだ。「コツコツ」という言葉は片桐さんのためにある。生涯現役こそ人生の喜びをしていますが、この時代に学んだことがいまの仕事につながっています。働きながら編集のノウハウを学び、さまざまな本をつくりました。その後いくつか部門を移りましたが、どの部門にも編集という仕事は少なからず存在するため、若いときに出版の世界を経験したことが自信となり、前向きに仕事に取り組むことができました。とりわけ、農作業で鍛えられた粘り強さが持ち味の私にとって、校閲や校正のような根気のいる仕事は、天職であったといまでは思っています。かつて農業はすべて手作業でしたから、コツコツ気長にやることが求められました。原稿とじっくり向き合う校正の仕事にも共通するものがあり、自分の性格に合っているのか、70歳を過ぎたいまも苦痛を感じることはありません。書籍だけではなく、研究者向けの雑誌の編集にもたずさわり、その後は総務部門やデータベース開発部門など、さまざまな部署で働き、ふり返ってみれば組織のほとんどの部署で働かせてもらったことになります。を務め、60歳で定年を迎えました。労働に特化した専門図書館は、現在も関係者から広く利用していただいています。もし、高年齢者雇用安定法の改正がもっと早くに行われていれば、65歳以降も同じ職場で働かせてもらえていたかもしれません。しかし、現実問題としては65歳で退職し、「さてどうしようか」と思案に暮れました。もちろん、老後の生活を楽しむ道を選ぶこともできましたが、働きたいという気持ちは一向に衰えることがなかったのです。ただ、家庭の事情で親しい人を看病する必要に迫られ、1年間はそのことにたずさわりました。その人の容体が次第によくなってきたのを見計らい、シルバー人材センターに登録して、保育園に通う子どもたちの見守りの仕事を2年ほど続けました。子どもたちは可愛いですし、だれかの役に立っているという喜びは大きいのですが、やはりこれまでの技術を活かした仕事に就きたいという願いは捨て切れませんでした。そんなジレンマに悶々としていたときに、前の職場の後輩から月刊誌の校閲・校正の仕事を紹介されました。幸いその月刊誌の性格上、校閲では私の経験を活かせると思い、二つ返事で引き受けました。閲や色校正を担当しています。校正の仕事は、さまざまな文章に触れるなかで多くのことを学べますし、視野も広がります。70歳を過ぎて大好きな仕事を続けていられることに感謝しかありません。望むのかをあらためて考えてみると、一つには経済的理由があります。私たちの世代は比較的年金は恵まれていますが、昨今の物価高を考えると、安定した生活を送るためには年金以外に収入を得る道の確保が必要かと思います。はり自らの経験やスキルを後進に伝えたいという思いです。だれかに伝えることが社会貢献につながると信じています。は、「せっかくの経験やスキルを眠らせないで」といい続けたいと思います。です。不安な時代だからこそ「今日できることは今日やっておくこと」を提唱します。また、職場で研修などの機会があれば、好機ととらえ積極的に参加しましょう。さらに一つの専門にこだわらず、自分の間口を広げてください。すべての経験は必ず後の自分の力になり、そのずっと先に生涯現役の道が待っています。現在は、月刊誌の最初の段階(初校)の校自分はどうして生涯現役で働くことを強くしかし、経済的理由以上に大きいのは、や早々にリタイアした同世代の仲間たちに最後に若い人たちへ、私からのメッセージ高齢者に聞く4552歳からは最後の部署となる図書館で館長エルダー

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