エルダー2023年4月号
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拠点の閉鎖にともない、配置転換を要する人員がいるのですが、いかに説明をしても納得してもらえず、配転命令をするほかなくなりました。命令後もこれに応じないことから、懲戒解雇を行おうと思うのですが、どのような点に留意する必要がありますか?配置転換命令の制限配置転換に応じない社員を懲戒解雇することはできますか配転命令の有効性が維持できるかを検討したうえで、有効と考えられる場合には、懲戒処分の手続をふまえて、解雇を実施する必要があります。解雇権濫用とならないように、慎重に行うことが求められます。Q2配置転換命令1企業は、労働者に対する人事権を有しており、事業所や部門の配置に関して、配置転換を命じることが可能と考えられています。就業規則において配置転換の根拠規定があることが望ましいですが、労働契約において特段の限定がなされておらず、実際に広く配置転換等が行われている場合には、労働契約に黙示的に合意されていると評価される場合もあります。配置転換には、業務内容の変更(部署の変更)と勤務場所の変更の2種類があり、これらが複合的に行われることもあります(業務内容と勤務場所の両方が変更される)。一般的には、勤務場所の変更により転居をともなう場合は転勤と呼ばれ、事業所内での部署の変更は配置転換と呼ばれることが多いといわれます。いずれにせよ、労働者にとっては、従前の労働環境からの変化をともなうことから、使用者による配置転換の人事権行使を完全に自由にすることはできません。2配置転換命令の制限については、合意による制限と判例により制限されている限界があります。まず、合意による制限は2種類に分類することが可能であり、業務の内容の変更を制限する職種限定合意と、勤務場所の変更を制限する勤務地の限定合意です。これらについては、労働条件通知書や雇用契約書に勤務場所や業務内容が明記されているだけでは足りず、これらの記載以外に特段の合意が明示されていることが必要と考えられます。これらの書面に明記される勤務場所や業務内容は、労働基準法において明記することを求められているから記載するほかないものであり、使用者と労働者の間の特別な合意としては位置づけられないと考えられます。例外的に、職種限定の合意が認められるとすれば、特殊な資格を有する者である場合(例えば、検査技師や看護師など)や専門性が高い業務(例えば、大学教授など)に該当する場合とされています。による一方的な配置転換を行うことはできず、本人の同意を得て行うことが必要となります。ては、最高裁昭和61年7月14日判決において、「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、これらの合意がある場合には、人事権の行使次に、判例による配置転換命令の限界とし2023.452A

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