エルダー2023年4月号
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ハラスメント対策は事業主の責務タハラ)と呼ばれている点も押さえておきたいところです。ここでの定義や記載は厚生労働省のハラスメント対策総合情報サイト「あかるい職場応援団※」を主に参考にしています。職場でのハラスメントを理解するための動画や裁判例、他社の取組み事例、Q&Aなどがわかりやすく網羅されているため、より深い理解のために参照をおすすめします。ハラスメントの放置により、最悪なケースでは自殺に至る事案が実際に何度も起こり、ハラスメントは会社で必ず対応していくべき重要課題として位置づけられるようになりました。そこで、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が改正、2020(令和2)年6月に施行され、ハラスメント防止措置が事業主の責務となり、2022年4月にはパワーハラスメントの防止が中小企業を含めて全企業に義務化されました。これにより事業主は、「事業主の方針などの明確化およびその周知・啓発(職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針化、行為者に対する対処内容の就業規則等文書への記載など)」、「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備(相談窓口の設置、対応の体制など)」、「職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の確認、被害者に対する配慮、行為者に対する措置、再発防止措置など)」、「あわせて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止など)」を必ず行わなければならないとされました。それでは、これらの措置を通してハラスメントの実態はどのように変化したのでしょうか。2020年6月の関係法律の施行1年後に実施した「職場のハラスメント防止に関するアンケート結果(2021年12月14日)」(日本経済団体連合会)を参照するとその様子が垣間みえます。5年前と比較した相談件数について、増えたか減ったかの比較でみていくと、パワハラセクハラ11・5%/28・8%、妊娠・出産に対するハラスメント3・0%/6・8%、育児休業・介護休業などに関するハラスメントは4・0%/5・5%と、パワハラ以外は「増えた」より「減った」が多い結果になっています。ただし、パワハラをはじめとして相談件数が増えたのは事案の純増だけでなく、法施行や相談窓口の設置、啓蒙活動などにより以前より相談しやすくなったという側面もあるようです。対応の課題についてみていきます。同アンケートで課題の上位三つとして「コミュニケーション不足」、「世代間ギャップ・価値観の違い」、「ハラスメントの理解不足」があげられています。同アンケートにおいてハラスメントに関する研修を行っていると回答した企業は6〜7割に上っており、基本的なハラスメントに対する理解促進は引き続き進んでいくことが期待できます。しかし、今後は世代間ギャップ・価値観の違いにより、注意を向けていく必要があると考えます。近年、ハラスメントや性別、働き方に関する価値観が急速に変化しており、昔は許されていたと思われていた言動が、近年では問題視されることが増えています。これは政治家などの公人の言動でも、しばしば社会問題として取り上げられていることからもわかります。自らの意識だけで価値観を一気に変えるのはむずかしいため、常に世間の動向や他社のケースなどに目を向け、定期的に情報提供や研修、多様なメンバーでのコミュニケーション活性化策を実施するなど、企業としての継続的な取組みが重要と考えます。* 最後に、今後必要となるハラスメント防止・* * 次回は、「採用」について解説します。* 57※ 「あかるい職場応援団」…… https://www.no-harassment.mhlw.go.jpエルダー44・0%/16・3%(増えた/減った。以下同)、■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典

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