エルダー2023年4月号
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―65歳までの雇用確保の義務に加え、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。65歳超の高齢者の活用についてはどのように考えていますか。―高齢者雇用に取り組んでいる人事担当者に向けたアドバイスをお願いします。い役割をになってもらうということですね。―年齢に関係なく、能力に応じたふさわし(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)若手と高齢社員を区別せず同じテーブルに載せて評価・処遇を上野 企業に聞くと、「65歳と70歳では、事情が大きく異なる」とよくいわれます。65歳までは健康な人がかなり多いのですが、70歳に近くなると健康に問題を抱える人が増え、フルタイム勤務を希望しない人も多くなる。そうなると、労働時間や健康管理も含めて、人事・賃金管理が煩雑になるのです。しかし、問題も含めて高齢社員の働き方に対するニーズも変化しますし、やはり多様な選択肢を提示することが重要だと思います。ある会社では、60歳以降の働き方の選択肢を13パターン用意しています。フルタイム勤務以外に、短時間勤務や隔日勤務もあれば、半日勤務も可能です。例えば、「午前中は地域活動や家事をしたいので午後勤務にしたい」、「孫の塾の送迎があるから午後3時までの勤務にしたい」など、さまざまなニーズに応えることのできる仕組みとしています。その結果、高齢社員の満足度が非常に高いのです。ただし、この会社の場合は、高齢社員が働く職場を別会社にして、それまでとは異なる業務をになっているからこそ、成功した取組みといえるかもしれません。実際に制度を構築し、軌道に乗せていくには、いろいろな試行錯誤が必要になると思いますが、働き方を柔軟に選べる仕組みをつくることが大事でしょう。上野 と高齢社員は一緒」だということです。世間では年金などの問題から、「高齢者が優遇され、若者がそのツケを払っている」といういい方をされることがありますが、人事制度では逆であるような気がします。多くの企業が「優秀な若手を採用して活用したい」といい、若手が入社したいと思うようなさまざまな施策を講じていますが、高齢社員にも優秀な人は大勢いますし、若手ならだれもが優秀というわけでもありません。若手も高齢社員も一緒なのです。こうした観点からも、60歳前と一つ意識していただきたいのは「若手と高齢社員を同じテーブルに載せた制度が必要なのです。上野 間が延長されたために店長の労働時間が長くなり、その解決策として65歳を過ぎた店長経験者が第二店長として夜間に働いています。勤務時間は1日6時間ですが、夜間勤務ということもあり、フルタイムの給与と変わりません。豊富な経験を活かして、やりがいを持って働いています。情があるとは思いますが、どの会社にも重要な役割をになえる高齢社員がいるはずです。そうした人材を柔軟に活用できる仕組みを、経営者や人事担当のみなさんには、ぜひ考えてほしいと思います。あるスーパーマーケットでは、営業時もちろん会社や業態によってさまざまな事2023.44 松本大学 人間健康学部スポーツ健康学科 教授上野 隆幸さん65歳以降も働いてもらうとなると、健康上の60歳以降を分断した人事制度ではなく、若手

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