エルダー2023年4月号
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最適なめっき工程を追求し世界初の技術開発にも貢献代の名工)」を受賞した。山本さんは、バンド活動を経て、年に入社した。ものづくりが好きで、めっきのことはよくわからなかったものの、興味があったという。「入社後に諸先輩から、一つひとつの作業に理屈があることをていねいに教えてもらいました。そのおかげで、計算することによってでき上がりを想定できることがわかりました。仕事を通じてめっきへの興味がより高まり、関連する書籍を探して知識の幅を広げるなど、いま思えば刺激的な日々でした」以来、現場での経験を積み重ね、現在は製造部長として各ラインの生産管理をになう。「薬品メーカーが定めためっき処理の基準はあるものの、量産に適したプロセスは自分たちで創意工夫しなければなりません。同じ品質を継続して効率よくできるようにプロセスを考えることが、私の主な役割になります」同社の強みは、市場のニーズをつかみ、新たな機能を持っためっき技術をいち早く開発することだ。山本さんがたずさわったマグネシウム合金へのめっき技術もその一つ。マグネシウムは酸化しやすく、部品が入荷された時点ですでに表面に酸化膜(さび)ができている。めっき皮膜の安定した生成のためには、前工程として、酸化膜をめっきの厚みでカバーできる数ミクロン※1レベルで均一に除去する必要がある。そのために使用する薬品の濃度やpH※2などを調整し、量産化を実現させた。また、山本さんは世界初の技術開発にも貢献している。それが三価クロムのバレルめっきだ。バレルめっきとは、対象物をバレルと呼ばれる網状の樽のような装置に入れ、めっき液のなかで回転させ62膜厚計で皮膜の厚さを測定する。めっきによる皮膜の厚さは品質の重要な指標の一つ。このほか、外観の色合いなども調べ、めっきの品質を確認する※1 ミクロン:マイクロメートル(㎛)。1ミクロン=1000分の1mm※2 pH:水素イオン濃度指数。液体の性質(酸性・アルカリ性の度合い)を判断するための尺度「不良品が出たら、現物を観察してその原因を探り、解決策を見つける。その積み重ねが、良品の継続的な生産につながります」 30歳を過ぎた1996(平成8)

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