エルダー2023年5月号
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はじめに近年、治療技術の進歩などにより、「不治の病」とされていた病気も「長くつき合う病気」に変化し、治療を受けながら仕事を続けることが可能な状況になってきています。治療と仕事の両立支援の取組みは、病気を抱えながら働き続けたいと希望する方が、適切な治療を受けながら、安心・安全に仕事を続けることを支援し、企業や医療機関にもプラスになる取組みです。両立支援を進めることで企業にとっては、業務により病気が増悪しないよう労働者の健康を確保するとともに、継続的な人材の確保、労働者の安心感やモチベーションの向上による人材の定着が図れます。また、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現や健康経営の取組みとし申し出のしやすい環境整備が重要環境整備は取り組めるところから労働者本人から両立支援の申し出を受けた後への周知企業で進める治療と仕事の両立支援のポイントて生産性の向上などが期待できます。医療機関にとっては、仕事を理由とした治療の中断を防止し、治療を効果的に実施することができます。両立支援の対象者は、入院や通院のための時間の確保などが必要になるだけでなく、症状や治療の副作用、障害などによって、一時的に健康状態が悪化したり、業務遂行能力が低下したりする場合があります。そのため、時間的制約に対する配慮だけでなく、症状や治療方法等の個人の状況に合わせた支援が必要となります。個別の事情に応じた支援を行うためには、治療に要する期間や治療の副作用などの情報が必要になりますが、病気のことを会社に知られたくないと考える人も少なくありません。両立支援は、労働者本人から支援を求める申し出がなされたことを端緒に取り組むことが基本となるため、事業場としては、本人からの申し出が円滑に行われるよう、事業場内ルールの作成と周知、労働者や管理職などに対する研修による意識啓発、相談窓口や情報の取扱い方法の明確化など、申し出がしやすい環境を整備することが重要です。に必要な環境を整備することも考えられますが、事前に両立支援を行うための環境整備に取り組んでおくことが重要です。環境整備の具体的な取組みには、以下の四つがあげられます。(1)事業者による基本方針等の表明と労働者厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課治療と仕事の両立支援室特集病気の治療を続けながら働ける会社へ11エルダー 解 説

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