エルダー2023年5月号
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定年引上げにともない、加齢による健康変化に対応していく新たな取組みを検討に伴走することができており、その効果も感じているという。復職にあたっては、主治医と連携し、本人に合った復職プランを作成する。そのため主治医には、本人の通勤や職務内容などの的確な情報提供に努め、医学的知見による配慮事項などをできるかぎり具体的に得るようにしている。復職プランは、主治医の意見と本人の希望、職場の実態を見て、総合的に産業医が判断する。ただ、ケースは一人ひとり異なり、その都度最善のプランを考え、作成するのはむずかしく、状況に応じて、産業保健スタッフで事例検討会議を行っている。一方で、生じた課題の一つとして、本人が復職を強く望んだり、復職を焦ったりする場合での対応がある。健康管理室では、本人の気持ちに寄り添いながらも、会社としては従業員に対して十分な安全配慮を行う義務があり、本人の希望に沿えないこともある。最善を求めて、手探りの対応が続いているという。「それぞれのケースに対応し検討するなかで、見えてくることもあるので、今後は、運用面での改善を図っていくことも考えています」と柔軟な姿勢で取り組んでいる。治療と仕事の両立支援について、これから取組みを進める企業へのメッセージを求めると、大柿さんは次のように答えてくれた。「個別の働きかけや何らかの取組みなど、すでに行われている支援はあると思います。あるいは制度化しなくてもよい会社もあるかもしれません。制度づくりに取り組んだ当社で大切にしたのは、あれもこれもではなく、足元をしっかり見て、だれのために何をするのか、目的を明確にし、既存制度や取組みを整理し、足りないことをつくっていく、ということでした」健康面での従業員へのサポートについては、今後も予防に力を入れていくという。しかし、健康リスクが高く、フォローが必要な人ほど、健康管理室とあまりかかわりを持とうとしない傾向が見られるという。「そうした人がたまたま来室した際に、なるべく多くの情報提供をしようとして、結局敬遠されるという悪循環に陥ることもあります」そこで、産業保健職側の対応力を上げるため、マーケティングを用いた手法に着目し、相手の心のつかみ方なども勉強しているそうだ。また、同社では2024年4月より、定年を現行の60歳から65歳に引き上げることが決まっている。60歳以降も、59歳以前の賃金体系を継続しながら、貢献度などに応じた処遇を行い、さらなる活躍推進を図るとともに、従業員のやりがい向上を目ざすという。して、加齢による健康変化に着目し、①就業に直結すること、②リカレント・リスキリングの実現にかかわることの二つの観点から、会社として対応すべき健康変化を絞り込み、必要な対応策を実施していく方針とのこと。同時に高齢従業員の健康意識の向上を図るという。具体的な取組み内容は今後、現場の声を聴きながら検討していくとのことだ。今後も注目していきたい。健康管理室では、65歳定年にともなう対応と従業員が生涯現役で働ける同社の取組みに、2023.518

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