エルダー2023年5月号
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第2回役職定年制って必要? それとも廃止?マンガで学ぶ高齢者雇用集中連載33エルダー内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。プロフィール内田教授に聞く一定年齢に達した者が役職を後進に譲る「役職定年制」では、若手社員や中堅社員がいままでより高い地位と大きな責任をになうことで経験を積み、実力が磨かれます。長期的観点から人材育成に努める企業では、役職定年制も有効な選択肢の一つです。一方、問題となるのは役職離脱者のその後の意欲低下です。その背景には、①役職離脱後の役割や任務があいまいで何をやればよいのかわからない、②管理職手当がなくなって収入が大きくダウン、③肩書きがなくなりプライドを喪失、などが考えられます。役職離脱者の意欲低下は、本人の能力発揮を低下させるだけではありません。やる気をなくしたベテランの振舞いは職場の同僚である若手社員や中堅社員、ひいては部門や会社の業績に悪影響を与えます。70歳雇用も視野に入った現在、役職定年後も10年、15年在籍する高齢社員の活力維持に、企業は真剣に取り組まねばなりません。役職定年後の高齢社員が活き活きと働いている企業では、①新人育成のためのテキスト作成や部門の規定・マニュアル作成などテーマを特定して具体的な役割や任務を与える、②与えられた役割や任務の達成度や成果を評価(人事考課)して賃金や賞与に反映する、③マイスターやフェロー、塾頭など管理職とは違う称号や肩書きを与える、などの工夫をしています。ある会社では配置転換を重ねて若手を多能工(ゼネラリスト)化、早ければ20代からプレーイングマネージャーとして管理職に就いて全社的視点を体得、知識や技術が陳腐化する前の、50歳前後に役職を離れ、匠(スペシャリスト)として第一線に戻ります。役職定年制の効果的活用の一例です。大手機械メーカーの元総務部長さんは、「役職定年後、自分のところに相談に来る者が多くなった」とうれしそうに話していました。「上司にはいいにくいが、あの人にだったら相談したい」と慕われるベテランの積極的活用を考えたいものです。解 説解 説解 説 高齢者雇用を考えるうえで欠かせない「役職定年制」。マンガに登場した“株式会社さつき産業”のように、役職定年後のモチベーションダウンなどに課題を感じている人も少なくないのではないでしょうか。就業期間の延伸が進むなかで、役職定年後の就業期間も伸びているからこそ、役職定年者の活躍に向けた取組みは欠かせません。そこで、役職定年者の戦力化に向けたポイントについて、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。70歳就業時代を迎え、役職定年後の在籍期間は10〜15年に高齢社員の活力維持に向けて真剣な取組みを教えてエルダ先生! こんなときどうする?Season2高齢者雇用のポイント

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