エルダー2023年5月号
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同社は社員の7割が女性で、多くの女性社員が子育てや介護をしながら働いています。「私自身、家庭での女性の役割負担の重さを実感しています。だからこそ、だれもが働きやすい職場環境づくりを推進することは、企業の務めだと思っています」(德武社長)同社の定年年齢は60歳で、希望者全員を65歳まで再雇用しており、65歳以降も年齢上限なく働き続けることができます。「高齢社員には豊富な経験があり、若手社員やお客さまに安心感を与えることができます。困ったときや、だれに聞いたらよいのかわからないときなども、頼りになる存在です」と話します。大きな信頼を寄せるベテラン社員が安心して働けるよう、今後は選択定年制の導入も検討していく予定とのこと。「一律で65歳に定年年齢を上げるという考え方もあるとは思いますが、社員は一人ひとりライフスタイルが違うので、60歳を一つの節目とし、定年の年齢についての希望を聞くようにしようと考えています」(德武社長)また、同社は高齢社員のために新しい職域として、「アシスト制度」を導入しています。これは、定年を迎えた社員が、各部署の業務の状況に応じて、職域を越えてフォローを行うための制度。現在、アシスト制度が適用されている2人の高齢社員は、いずれも総務経理部出身で、事務職のエキスパートです。忙しいときや困ったとき、外部に発注する時間もなく、部署内で対応すると残業になるようなちょっとした業務のサポートなどに対応しています。「ベテランは作業が早く、依頼する側も人となりがわかっているので、頼みやすいようです。ベテラン側もいままでの仕事にこだわらず、経験を最大限に活かして仕事ができますし、さまざまな部署から感謝されてやりがいを感じているようです」と、双方にメリットがある機能的な体制として社内に浸透しつつあります。塩田プランナーは2021(令和3)年4月に初めて同社を訪問しました。「定年後も高齢社員が知識・経験・能力を活かして働いている実態があり、人材活用の会社方針や協調的な職場風土を高齢者雇用制度に反映してもらいたいという観点からアドバイスを行いました。具体的には定年後の働き方(労働時間、職務内容など)は個人によって異なるので、多様な働き方とそれぞれが活躍できる職務や役割を設定することなどを提案しました」(塩田プランナー)今回は、会社から経験値を活かした仕事を期待され、役割をまっとうする2人のベテラン社員にお話を聞きました。十■河■和■福■さん(67歳)は、定年の数年前から65歳まで、中国・四国地区の地域営業担当者として、月の半分は出張の日々だったとのこと。「お客さまサポートセンター」の立ち上げにあたり、「営業経験を活かしてほしい」と期待されて配置転換となりました。現在は、同社の商品を取り扱う事業者や病院売店、スーパー、ホームセンターなどからの問合せに対応しています。「靴の選定や症状への対応など、悩みをしっかりと聞き取り、アドバイスを行っています。お客さまに寄り添うことが何より大切です」と語る十河さん。福祉用具■■■個々のライフスタイルに寄り添った選択定年制の実現に向けて積み重ねた経験を活かす仕事で働きやすい会社に貢献2023.538お客さまからの問合せに対応する十河和福さん

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