エルダー2023年5月号
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専門相談員、足と靴と健康協議会基本講座資格を持っており、2022年からは直販課の業務も兼務しています。「職場には、自分の子どもより下の年代もいます。若い人たちに見られる立場ですから、自分自身が元気で働くことが一番と思っています。お客さまに対しては受け身ではなく積極的に問いかけをして、より足の状態に合う商品を提案していくよう若手に示しています。『こんなお客さまにはこういう対応をしたよ』と考え方なども伝えるようにしています」と話します。若手社員へのメッセージとして「判断に迷ったときは、できるかぎり安心・安全に基づく対応を選択してほしいと思います」とお客さまに寄り添うようアドバイスを送り、「これからも会社の役に立っていきたい」と決意を語りました。勤続30年の野■崎■佐■代■子■さん(69歳)は、入社以来、生産管理部国内生産課で縫製を担当しています。「パーツオーダー」というセミオーダー商品の、靴の甲部分の縫製が野崎さんの主な担当業務。「縫製の仕事は数を縫わないと上達しません。先輩たちの手の動きを見て学んできました」と技術を習得するために行った工夫を教えてくれました。一つの靴を分業で完成させる縫製の仕事は、上達度合いが目で見てもわかりづらいこともあり、1年ほどで辞めてしまう人も少なくないのが悩みの種だとか。「最低でも5年は続けないと一人前になれません。若い方たちがこれから早く上達できるように、手伝っていきたいです」と話します。国内生産課の課長を務める岡■本■真■裕■子■さんは、野崎さんの仕事ぶりについて「ていねいかつ確実な作業が行え、むずかしい作業も進んで引き受けてくれ、あきらめずにやり遂げてくれます。まだまだ成長途中で力量が不足している若手社員の分を補ってくれる存在です」と話します。実は野崎さんは岡本課長の母親です。岡本課長の子育てが落ち着いたころ、野崎さんの縁で内職から入社に至ったのだそう。岡本課長は、母親の働く姿を見てきたからこそ、同社に就職を決めたそうです。「子育てや介護などもあり、やはり家庭のことが一番大切です。会社はこうした考え方を尊重してくれますから、この先もずっと働き続けられると思います」と話し、定年後の勤務継続を視野に入れていました。一方、野崎さんも職場の働きやすさについて、「以前、在宅介護をしていたときは、会社の朝礼や会議への出席を免除してもらい、とても助かりました。定年後も働き続けることができ、同じ仕事を続けられることには感謝しかありません」と話します。塩田プランナーは今回の取材を終えて、「働く意欲がある高齢社員に対しては、可能なかぎり個別の事情に配慮した勤務形態を用意することは望ましいことです」と評価していました。また德武社長は「製造業は経験に基づく技術が特に重要ですから、高齢技術者の力をうまく活用している製造業者の取組み事例などがあればもっと知りたいです」と、塩田プランナーにリクエストしていました。徳武産業は本社周辺に増えつつある遊休農地を借り受けるなどし、新規事業として地産地消の農業ビジネスも計画中とのこと。今後は、高齢の地主にノウハウを請いつつ、過疎化が進む地域の活性化にも取り組んでいくそうです。(取材・西村玲)■■■39エルダー親子で勤務する、縫製一筋の野崎佐代子さん(左)と国内生産課課長の岡本真裕子さん(右)

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