エルダー2023年5月号
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事」という②の要素で賃金の大半が決まるでしょう。ただし簡単な仕事であっても、経験の度合いによって③成果(貢献度)に有意差があるのであれば、①人材の年功的な能力評価を加味して賃金を決めるかもしれません。一方、高い専門知識や熟練技能が必要な仕事で、大きな責任がともない、人材の採用や育成に時間がかかる職種の場合は、②仕事の専門性や責任の度合い、①人材のポテンシャルなどをより重視することになります。専門性よりも、むしろ働く人の態度や努力が成果を大きく左右する仕事の場合は、①人材の行動姿勢を評価したり、仕事の③成果を評価して賃金を決めようとするでしょう。2①〜④賃は金企水業準内はのど事の情よですうがに、決⑤まのる費か用は、世間相場に照らしてどれだけ賃金コストがかかるかという「外部基準」を参照する必要性を示します。経営者は、企業外部の競争環境とともに支払える賃金費用の限界やその⑥効果性・経済性をシビアに判断し、なるべく安価に労働力を調達する方法を探りつつ、どの金額まで払えるか、払うべきかを決めていきます。市場経済のもとでは、賃金水準は人材・労働力という商品の「機能・品質」に対する市場価格と企業間の需給関係によって決まります。近代経済学の限界効用理論によれば、完全競争市場のもとで利潤を最大化しようとする企業は、次のような単純な理由から雇用や賃金を調整します。(+)賃金コストを追加して労働者を増やすほうが、より大きな追加収入を得られると判断したとき、企業は人を増やして利益最大化をねらいます。労働市場がタイトになれば、人の採用や離職防止のため賃金を上げます。この動きは企業や経済が成長するときの常態であり、これ以上賃金を上げ、雇用を増やしても企業として追加利益が見込めない限界、または人材不足のため採用できないという限界まで進みます。賃金の上限は高収益の企業ほど余裕があり、世間相場よりも高い賃金を提示し、よい人材を集めることができます。逆に低収益の企業はその余裕がないため、一定以上の賃金は提示できません。結果として企業の収益性により、賃金格差が生じます。(−)逆に労働者を減らして賃金コストを減らすほうが、収入の減少以上にメリットが大きいときは、解雇規制などの制限がないかぎり、あえて人を減らします。賃金も上げません。この動きは、景気後退の局面や、企業が高成長から低成長に移行するときなどに起きやすく、これ以上労働者が減ると損失が出るという限界の手前まで進みます。(±)雇用の増減にかかわらず、賃金を下げても質のよい人材が採用できるのであれば、企業は経済性を考えて、これ以下の賃金では採用しにくいという限界まで賃金を低く据え置きます。厳しい経済環境のもとでは、労働者の最低限の生活維持に必要な賃金水準まで割り込んでしま43エルダー図表1 賃金決定の基本要素と賃金制度内部基準外部基準①人材……能力・意欲…………………どんな人が働くのか②仕事……手順・ロジック・道具……どんな仕事をするのか③成果……貢献度………………………どれだけの成果をもたらすのか④時間……作業量………………………どのように支払うのか⑤費用……世間相場・需給関係………いくらで人を雇えるか⑥効果……費用対効果・生産性………費用対効果はどれくらいか ┌─────────(賃金制度)─────────────┐(生活) ①人材   →②仕事   →③成果   →(顧客の評価)生計費 能力   難易度・責任   貢献度     事業収益└────(④時間・作業量)────┘(⑤費用、⑥効果)世間相場・市場価値 付加価値生産性個別賃金賃金水準©株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載シニア社員のためのシニア社員のための「「ジョブ型ジョブ型」」賃金制度賃金制度ののつくり方つくり方

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